東京地方裁判所 平成9年(ワ)24号 判決
原告 田辺長吉
原告 田辺加代子
原告 久保昭江
原告 和田ミサ
原告ら訴訟代理人弁護士 神山美智子
右訴訟復代理人弁護士 佐々木幸孝
同 木本三郎
同 木村裕二
同 大迫惠美子
同 平澤慎一
同 紀藤正樹
同 山本政明
同 宇都宮健児
同 横塚章
同 石黒清子
同 荒川晶彦
被告 石崎松之介
被告 益川昇
右訴訟代理人弁護士 池田利子
被告 友部哲男
右訴訟代理人弁護士 増田次則
被告 菊池勝
被告 大久保維曙
被告 鯉江繁
被告 菊地幸雄
被告 河野浩一郎
右訴訟代理人弁護士 小山三代治
被告 中島修
右訴訟代理人弁護士 鳥生忠佑
被告 滝田文夫
主文
一 被告石崎松之介、被告益川昇及び被告大久保維曙は、各自原告田辺長吉に対し、金一〇七九万四三九五円及びこれに対する平成九年八月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告石崎松之介、被告益川昇及び被告大久保維曙は、各自原告田辺加代子に対し、金一〇七九万四三九六円及びこれに対する平成九年七月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告石崎松之介、被告益川昇及び被告大久保維曙は、各自原告久保昭江に対し、金一五九〇万三七四五円及びこれに対する平成九年一一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告石崎松之介、被告益川昇及び被告大久保維曙は、各自原告和田ミサに対し、金一三六七万二九〇四円及びこれに対する平成九年七月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 原告らの被告友部哲男、被告菊池勝、被告鯉江繁、被告菊地幸雄、被告河野浩一郎、被告中島修及び被告滝田文夫に対する請求をいずれも棄却する。
六 訴訟費用のうち、原告らに生じた費用の二分の一並びに被告石崎松之介、被告益川昇及び被告大久保維曙に生じた費用については、被告石崎松之介、被告益川昇及び被告大久保維曙の負担とし、原告らに生じた費用の二分の一並びに被告友部哲夫、被告菊池勝、被告鯉江繁、被告菊地幸雄、被告河野浩一郎、被告中島修及び被告滝田文夫に生じた費用については、原告らの負担とする。
七 この判決は、第一項ないし第四項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 被告らは、各自原告田辺長吉に対し、金一〇七九万四三九五円及びこれに対する平成九年八月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、各自原告田辺加代子に対し、金一〇七九万四三九六円及びこれに対する平成九年七月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告らは、各自原告久保昭江に対し、金一五九〇万三七四五円及びこれに対する平成九年一一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告らは、各自原告和田ミサに対し、金一三六七万二九〇四円及びこれに対する平成九年七月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 参議院議員である友部達夫らが、当初年金会オレンジ共済、その後年金会オレンジ共済組合の名称で、多数の者から、オレンジスーパー定期ないしオレンジスーパーファンドとして、巨額の預り金を受け入れ、これを詐取したとされる事件が起き、刑事及び民事事件となったが、本件は右事件の一部をなすものである。当初、年金会オレンジ共済組合、友部達夫(以下「達夫」という。)、友部みき子(以下「みき子」という。)及び友部百男(以下「百男」という。)も、被告であったが、右四名については、分離されて、平成九年三月一二日、いわゆる欠席判決がされた。
本件において、原告らは、被告らに対し、詐欺による共同不法行為であるとして、損害賠償請求権に基づき、損害金及びこれに対する民法所定年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めているところ、原告田辺長吉(以下「原告長吉」という。)は、平成八年一二月一六日に被告中島修(以下「被告中島」という。)から九〇万円の弁済を受けたので、これを損害金一五〇〇万円に対する不法行為の日の平成八年五月二二日から平成九年八月二日までの遅延損害金に充当し、その後四二〇万五六〇五円の弁済を受けたので、これを元本に充当して、前記第一の一の請求をし、原告田辺加代子(以下「原告加代子」という。)は、平成八年一二月一六日に被告中島から九〇万円の弁済を受けたので、これを損害金一五〇〇万円に対する不法行為の日の平成八年五月一三日から平成九年七月二四日までの遅延損害金に充当し、その後四二〇万五六〇四円の弁済を受けたので、これを元本に充当して、前記第一の二の請求をし、原告久保昭江(以下「原告久保」という。)は、平成八年一二月二七日に被告中島から一三二万六〇〇〇円の弁済を受けたので、これを損害金二二一〇万円に対する不法行為の日の平成八年九月三日から平成九年一一月一四日までの遅延損害金に充当し、その後六一九万六二五五円の弁済を受けたので、これを元本に充当して、前記第一の三の請求をし、原告和田ミサ(以下「原告和田」という。)は、平成八年一二月二七日に被告中島から一一四万円の弁済を受けたので、これを損害金一九〇〇万円に対する不法行為の日の平成八年四月二五日から平成九年七月六日までの遅延損害金に充当し、その後五三二万七〇九六円の弁済を受けたので、これを元本に充当して、前記第一の四の請求をする。
二 基礎的な事実(証拠等の摘示のない事実は当事者間に争いがない。)
1 本件の主要な関係者
(一) 原告長吉は平成八年五月二二日に一五〇〇万円を、原告加代子は同月一三日に一五〇〇万円を、原告久保は同年九月三日に二二一〇万円を、原告和田は同年四月二五日に一九〇〇万円をそれぞれ預け入れて、年金会オレンジ共済組合作成名義のオレンジスーパーファンド証書の交付を受けた。(甲四の1ないし4、一三の2、弁論の全趣旨)
(二) 年金会オレンジ共済組合定款(平成七年一〇月一日施行)と題された書面末尾の役員名簿において、みき子は理事長、百男は専務理事兼総括本部長、被告益川昇(以下「被告益川」という。)は常務理事兼総務課長、被告友部哲男(以下「被告哲男」という。)は常務理事兼総務課長代理、被告菊池勝(以下「被告勝」という。)は理事(総代)、被告石崎松之介(以下「被告石崎」という。)、被告大久保維曙(以下「被告大久保」という。)、被告鯉江繁(以下「被告鯉江」という。)及び被告菊地幸雄(以下「被告幸雄」という。)はいずれも理事、被告河野浩一郎(以下「被告河野」という。)は監事とされていた。(甲一)
(三) 被告中島は、年金会オレンジ共済の代理店(オレンジ共済栃木支部長)であった。また、被告中島及び被告滝田文夫(以下「被告滝田」という。)は、日本団体生命保険株式会社(以下「日本団体生命」という。)の保険外交員であった。
(甲九の1、2、被告中島、被告滝田、弁論の全趣旨)
(四) 達夫は、平成七年七月の参議院議員選挙(比例代表)に新進党から立候補して当選した者であり、現在も参議院議員である。
みき子は達夫の妻、被告哲男は達夫とみき子間の長男、百男は次男である。また、被告大久保はみき子の弟、被告鯉江はみき子のいとこである。
(五) 政治団体「年金党」(代表者・達夫)及び年金党と達夫の政治活動を支援することを目的とする政治団体「年金会」が存在した。
年金会オレンジ共済は、オレンジ共済の名称を用いた生命共済事業を開始し、次いで、オレンジ年金の名称を用いた預り金事業を開始した。そして、オレンジ年金は、オレンジスーパー定期、オレンジスーパーファンドと名称が変更された(以下、右の名称の商品を総称して「オレンジスーパー定期」といい、右の名称を用いた預り金事業全体を「オレンジスーパー定期事業」という。)。
(乙コ一、二、四の1、2、五、一五ないし一七、一九、弁論の全趣旨)
(六) 年金会オレンジ共済組合・第一回理事会議事録と題する書面があるが、同書面には、平成七年一〇月一日、理事一〇名全員が出席し、理事会が適法に成立したとした上、従前の年金会オレンジ共済を民法上の組合に組織変更し、今後新たに作成した組合「定款」に基づいて、組織を運営すること、各支部長を組合の総代に任命すること、理事の中から組合理事長としてみき子、専務理事として百男、常務理事として被告哲男及び被告益川を選出することをいずれも全員一致で承認した旨の記載がある。
(甲八)
2 オレンジ共済組合事件
(一) 毎日新聞は、平成八年九月一三日、年金会が無許可で共済事業を行っている旨の報道をし、それ以降、新聞・週刊誌等において、年金会が運営する年金会オレンジ共済組合の出資法違反事件で同組合幹部が同法違反容疑事実を認めているなどと報道されるようになった。
(甲二四、四八、乙コ三六、五〇の1)
(二) みき子、百男、被告石崎、被告益川及び被告大久保は平成九年一月二七日に、達夫は同月二九日にそれぞれ詐欺容疑で逮捕され、達夫、みき子、百男(以下、右三名を「達夫ほか二名」という。)、被告石崎及び被告益川は、同年二月、東京地方裁判所に詐欺の公訴事実で起訴された。
右事件の平成九年六月二五日の公判期日の冒頭陳述において、右五名は、平成三年三月から平成八年一一月までの間、合計二六五四名の顧客から、オレンジ年金、オレンジスーパー定期等の預り金名下に合計約八四億八六〇〇万円を受け入れて騙取し、生命共済の掛金として合計約五億三〇〇〇万円、代理店登録料として合計約二億五八〇〇万円をそれぞれ受け入れ、右受入金のうち、約三四億一〇〇〇万円は顧客への返戻金、利息及び共済金の支払に充て、約一八億八六〇〇万円は事業経費の支払に充て、その余の約三九億八〇〇〇万円は達夫の負債の返済や選挙費用、達夫ほか二名の生活費、遊興費等に費消したとされた。もっとも、公訴事実は、平成六年五月一八日ころから平成八年九月二四日ころまでの間、五八回にわたり、原告らを含む三五名から、預り金名下に、合計六億六五五四万九五二〇円を騙取したというものである。
そして、東京地方裁判所は、平成一二年二月一七日、被告石崎に懲役五年の、被告益川に懲役三年の判決を言い渡し、同年三月二三日、達夫に懲役一〇年の、みき子に懲役五年の判決を言い渡した。
(甲一一、六二の1、六四(ただし、被告幸雄の関係は除く。)、乙コ五〇の3、五四の3、弁論の全趣旨)
三 争点及びこれに関する当事者の主張
1 被告石崎について
【原告らの主張】
被告石崎は、自己の債権回収のために、達夫ほか二名のもとを平成四年四月から同年六月にかけて二、三〇回訪問する中で、達夫ほか二名が、オレンジ共済の名称で生命共済事業を行っていること及びオレンジ年金という預り金の商品があることを知るとともに、オレンジ年金の預り金については達夫がすべて費消してしまっていることを聞いた。
被告石崎は、自己の債権の回収だけでなく、収益の獲得を目的として、年金会オレンジ共済に代理店制度を導入させ、以後は代理店募集業務を一手に引き受けてオレンジスーパー定期事業を急速に拡大させ、結果的に被害の巨大化を招いた。また、被告石崎は、代理店研修会において、直接代理店に対し、虚偽の事実を告げたほか、虚偽の勧誘文言を教示するなどして、被害を拡大させた。
このように、被告石崎は、オレンジ共済組合事件で中心的な役割を果たしており、故意で詐欺商法であるオレンジスーパー定期事業に加担したものであって、原告らに対し、共同不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
【被告石崎の主張】
被告石崎は、オレンジ生命共済事業には関与したが、オレンジスーパー定期事業には一切関与しておらず、オレンジスーパー定期の預り金からは何ら利得していない。
2 被告益川について
【原告らの主張】
被告益川は、オレンジスーパー定期事業において資金運用の実態がないことを知っており、したがって、顧客らに対し、預り金を返還できない事態が早晩生ずることを知っていたにもかかわらず、代理店研修会を通じて、代理店に虚偽の勧誘文言を教示するという詐欺における本質的な部分を担当し、また、円滑な組織的営業活動の外観を取り繕う上で不可欠な総務部門を担当することによって、詐欺商法としてのオレンジスーパー定期事業を積極的に推進した。
このように、被告益川は、故意で詐欺商法であるオレンジスーパー定期事業に加担し、同事業を積極的に推進したものであるから、原告らに対し、共同不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
【被告益川の主張】
被告益川は、達夫ほか二名の下で契約者名簿の作成等の単純事務に携わっていたに留まり、何ら実質的な権限を有していなかった上、資金運用の実態は知らされておらず、虚偽のセールストークをしているとの認識もなかった。もっとも、被告益川は、平成五年三月ころから、運用の実態に疑いを持つようになったが、達夫が被告益川の知らないところで運用しているのではないかと考え、立ち入らないことにした。
また、被告益川は、以前からあった勧誘文言を承継したにすぎず、その後、その真実性に疑問を抱いたとしても、入社後間もない使用人として、これを阻止することは期待できないし、かつ、被告益川が虚偽の勧誘文言を用いずとも、他の誰かが同様の行為をしていたはずである。
したがって、被告益川には、違法性の意識がなく、期待可能性もなく、因果関係もないのであって、責任はない。
3 被告哲男について
【原告らの主張】
被告哲男、被告勝、被告大久保、被告鯉江、被告幸雄及び被告河野(以下、右六名を「被告哲夫ほか五名」という。)は、年金会オレンジ共済組合の理事又は監事として、オレンジ共済事業に携わっていたのであるから、<1>年金会オレンジ共済組合が自己資本もなく、オレンジスーパー定期事業という預り金受入事業を行い、一般の預金金利を上回る高利の支払を約しており、共済事業の剰余金では顧客に対する支払利息を賄うには到底不足することを認識していたので、約定の高利の支払を実現するには一般の金融機関よりも特に有利な資金運用を行い、支払額を償うに足りる財産的基礎を確保することがオレンジ共済事業の存立のために不可欠であると認識していたはずであるから、オレンジ共済組合の財産的基礎の確保の方法及びその実績、資金運用の具体的方法及びその実績、資金運用の具体的方法及び運用率等について調査確認する義務を負っており、<2>年金会オレンジ共済組合が具体的な法律上の根拠がないのに、オレンジスーパー定期事業という預り金受入事業を行っていること、つまり、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)に違反すること、ひいては、役員・従業員の給与、代理店の手数料など支出した費用を償うに足りるだけの運用利益を上げる以前に同法違反により摘発されれば、事業の継続が不可能となり元本の償還すらできなくなることを認識していたので、右事態によりオレンジスーパー定期事業が破綻し、それにより顧客に損害を与えることは必至であるから、右損害発生を回避する義務あるいは予見する義務があり、さらに、<3>年金会オレンジ共済組合の役員として組合のため善良な管理者の注意をもってその職務を遂行すべき定款上の義務があったので、年金会オレンジ共済組合が違法な行為をしないよう監督し、不正な行為をしないよう監視し、他の役員が犯罪を行わないよう監督し、これら違法・不正な行為が行われていることを知ったときは、これを中止させるために必要な措置をとるべき定款上の注意義務を負っていたにもかかわらず、右<1>ないし<3>の注意義務を怠り、受入資金の不正流用に積極的に加担するか右不正流用を知りながら放置して、財産減少行為に加担したり、共済事業や財団法人の設立準備行為に加担して、オレンジスーパー定期事業という詐欺商法を援助・助長する行為を行ったり、年金会オレンジ共済組合の役員として、組合の財産状況の調査確認・法令違反行為の監督、他の役員の違法・不正行為の監督を行わないで詐欺商法を放置し、もって、被告哲男ほか五名は、達夫ほか二名、被告石崎及び被告益川を中心としてされたオレンジスーパー定期事業という詐欺商法を推進し、あるいは放置して、これに加担したから、共同不法行為責任がある。
そして、被告哲男は、平成七年七月以降、年金会オレンジ共済総務課長代理の職につき、同年一〇月以降は、年金会オレンジ共済組合の理事にも就任した。また、被告哲男は、毎月五〇万円もの給料を得てほとんど毎日休みなくオレンジ共済本部事務所へ出勤しており、電話応対のマニュアルのほか、業務内容に関するマニュアルも作成した。右の業務内容に関するマニュアルの内容は、運用実態等に関する虚偽内容を含むもので、この点の虚偽説明こそが、オレンジスーパー定期事業という詐欺商法の根幹をなすものであるから、被告哲男が本件詐欺商法に深く関わっていたことは明らかである。被告哲男は、平成七年一一月に、年金会オレンジ共済組合の関連会社である株式会社オレンジシステムサービス(以下「オレンジシステムサービス」という。)、株式会社オレンジネット(以下「オレンジネット」という。)及び株式会社オレンジ保証サービス(以下「オレンジ保証サービス」という。)の各取締役に就任しているところ、右各会社は、いずれも年金会オレンジ共済組合と一体不可分の組織であり、これらの取締役に被告哲男が就任していたということは、被告哲男がオレンジスーパー定期事業に深く関与していたことを示している。
したがって、被告哲男は、故意又は過失による共同不法行為責任を負うべきである。
【被告哲男の主張】
被告哲男は、みき子及び百男から年金会オレンジ共済を手伝うように半ば強制的に勧誘を受け、平成七年八月一八日から、年金会オレンジ生命共済を手伝うようになったが、その業務は、主にオフィスメンテナンス、掃除等であって、オレンジスーパー定期の募集、資金の運用、資金の流用等の事項に関与できる立場ではなかった。被告哲男は、年金会オレンジ共済組合に就職したことはないし、その設立に関与したり、理事への就任を承諾したこともないし、年金会オレンジ共済組合の定款に定められている総代会や理事会が開催されたことを知らないし、総代会で理事に選任されたこともない。
また、被告哲男が勤務していたのは、平成七年八月一八日から退職願を提出受理された平成八年四月一七日までの間であり、原告らがオレンジスーパー定期を預け入れたのは最も早い原告和田でも同月二五日であるから、被告哲男の行為によって原告らの損害が発生したものではない。
4 被告勝について
【原告らの主張】
被告勝の責任は前記3の原告らの主張における被告哲男ほか五名の責任のとおりである。
そして、被告勝は、財団法人及び年金会オレンジ共済組合の理事への就任を承諾することを通じて、団体としての信用性を強調する宣伝活動を容易にさせたり、百男に金銭を貸し付けたりすることを通じて、年金会オレンジ共済が顧客に対し約定どおりの利息を支払うための資金繰りを援助し、オレンジスーパー定期事業の虚業性が露呈されることを阻止して、詐欺商法としてのオレンジスーパー定期事業を幇助した。また、被告勝は、資金繰りや宣伝活動を援助してオレンジスーパー定期事業を推進するに当たって、顧客である原告らに対し、そのような高利の支払にもかかわらず破綻を来さずに事業を継続するに足りる資金運用がされているかを、具体的に調査確認する義務を負っていたところ、資金運用の詳細は敢えて尋ねず、右調査確認の義務を怠った。さらに、被告勝は、自ら代理店(宇都宮支部長)として顧客を勧誘することを通じて、オレンジスーパー定期事業が出資法の構成要件に該当することを認識していたから、いずれは警察の摘発を受けて事業が破綻し、顧客に損害を与えることは必至であるから、顧客に対して損害の発生を予見しこれを回避する義務があるところ、資金繰りや宣伝活動を援助してオレンジスーパー定期事業を推進した。
したがって、被告勝は、原告らに対し、共同不法行為に基づく損害賠償責任を負うべきである。
【被告勝の主張】
被告勝は、被告大久保から、二一世紀青少年育英財団の寄附団体として組合を作るので理事に就任してほしいとの依頼を受けて、年金会オレンジ共済組合の理事に就任しただけで、報酬等は一切受け取っていない。また、年金会オレンジ共済組合の理事会や業務報告、運営等には一切係わっていないし、平成七年一二月三一日付けで理事を辞任した。
なお、被告勝は、平成七年一月に代理店登録料を支払って代理店(宇都宮支部長)になり、オレンジスーパー定期に、親類や友人を勧誘して合計約二六〇〇万円余りを預け入れさせただけでなく、自分と家族の名義で合計一一五〇万円を預け入れたものであって、詐欺商法であるとは全く知らなかった。
5 被告大久保について
【原告らの主張】
被告大久保の責任は前記3の原告らの主張における被告哲男ほか五名の責任のとおりである。
そして、被告大久保は、有力政治家を招いたパーティーの設営を行ったり、自ら財団法人理事や年金会オレンジ共済組合理事への就任を承諾したりするなどして、年金会オレンジ共済の団体としての信用性を強調する宣伝活動を容易にさせたり、病院調査や共済給付金の支給などに従事して年金会オレンジ共済組合が運営する堅実な事業である旨の宣伝活動を容易にさせたり、被告哲男、被告勝、被告鯉江らを年金会オレンジ共済に結びつける組織者の役割を果たすなどして、詐欺商法としてのオレンジスーパー定期事業に加担し幇助した。また、被告大久保は、右行為につき、次のとおり、故意又は過失があった。すなわち、被告大久保は、達夫及び百男とともに、政界工作資金として、政治家に一億円を超える金員を交付し、その他達夫の選挙活動全般に関する費用(約一〇億円)の支出を行ったが、年金会オレンジ共済の預り金を達夫の政治資金に流用していた事実を知っていたから、原告らに対して、破綻を来さずに事業を継続するに足りる資金運用がされているかを具体的に調査確認する義務を負っていたのみならず、オレンジスーパー定期は出資法に抵触するのではないかとの疑問を持ち続けており、出資法に違反する預り金受入れ事業であれば、いずれは警察の摘発を受けて事業が破綻し、金銭を預け入れた顧客らに損害を与えることは必至であるから、顧客に対して損害を予見し回避すべき義務を負っていたものであるところ、右各義務を怠った。以上のとおり、被告大久保は、故意又は過失により、オレンジスーパー定期事業を推進したから、共同不法行為責任がある。
【被告大久保の主張】
原告らの主張を否認し又は争う。
6 被告鯉江について
【原告らの主張】
被告鯉江の責任は、前記3の原告らの主張における被告哲男ほか五名の責任のとおりである。
そして、被告鯉江は、みき子のいとこであって、達夫の主宰する年金党の選挙に立候補するなどして深くかかわり、達夫が選挙のために大きな借財を抱えて苦しい生活をしていたことを知っていたが、達夫ほか二名の唯一の収入源は、年金会オレンジ共済しかなかったのであるから、達夫が平成七年七月の参議院議員選挙に出馬するに当たっての選挙資金等がオレンジスーパー定期による預り金から流用されていたことを容易に気付くことができた。被告鯉江は、達夫から、私設秘書として給料を受け、いわば犯罪による利得の分け前に与っていたことになるのであるから、自ら積極的に犯罪を犯したものではないとしても、達夫らの詐欺商法に深くかかわり、詐欺性を認識することが容易で、しかもその利益の配分に預かっていたものである。したがって、被告鯉江は、故意又は過失によってオレンジスーパー定期事業を推進したから、共同不法行為責任を負うべきである。
【被告鯉江の主張】
被告鯉江は、二一世紀青少年育英財団の理事になるように依頼され、署名押印したことはあるが、年金会オレンジ共済組合の理事になる意思はなく、右組合の理事会等にも参加したことがないし、達夫の選挙資金工作やオレンジスーパー定期事業のことは一切知らない。
7 被告幸雄について
【原告らの主張】
被告幸雄の責任は、前記3の原告らの主張における被告哲男ほか五名の責任のとおりである。
そして、被告幸雄は、達夫や百男に政治家を紹介する窓口としての役割を果たし、達夫や百男が預り金名下に原告らから騙取した金員を政治資金のために費消することを幇助した。また、被告幸雄は、達夫が濫発してきた「年金会代表友部みき子」振出名義の手形・小切手を、一般大衆に知られることなく回収する役目を担って、詐欺商法としてのオレンジスーパー定期事業の実態を隠蔽して、達夫ほか二名の詐欺を幇助した。さらに、被告幸雄は、財団法人中日本オートスポーツ研修センターの理事に就任したり、年金会オレンジ共済組合の理事への就任を承諾するなどして、「年金会オレンジ共済組合は財団法人を設立して育英事業を行う予定で、有力政治家も関わっている。」旨の団体としての信用性を強調する宣伝活動を容易にさせ、詐欺商法としてのオレンジスーパー定期事業を幇助した。そして、被告幸雄は、達夫、百男らがオレンジスーパー定期による預り金を流用していることを認識し又は容易に認識し得たにもかかわらず、政治家を紹介したり手形等の回収に従事するなどして、達夫、百男らによる預り金の流用行為を幇助し、また、オレンジスーパー定期事業が出資法違反として摘発を受ければ、事業が破綻して顧客らに損害を与えることを予見し得たにもかかわらず、財団設立の手続に係わることを通じて、財団を設立予定であるとの宣伝活動を幇助したから、故意又は過失による共同不法行為責任を負う。
【被告幸雄の主張】
被告幸雄は、年金会オレンジ共済の活動には全くかかわったことがなく、年金会オレンジ共済がどのような事業をしていたかも知らない。なお、被告幸雄が年金会オレンジ共済組合の理事に名を連ねたのは、百男から名義を貸してほしいと頼まれたことによる。
8 被告河野について
【原告らの主張】
被告河野の責任は、前記3の原告らの主張における被告哲男ほか五名の責任のとおりである。
そして、被告河野は、平成四年一二月から年金会オレンジ共済と関わりを持ち、平成八年九月に年金会オレンジ共済組合が破綻するまで、公認会計士・税理士という専門家の立場から右組合の事業に深く関与し、その中で、みき子から、達夫の持ち出す金員に関する経理上の処理を相談されたり、年金会オレンジ共済の新年会や慰安旅行などに参加するなど、友部一家とも極めて深い関係を有しており、オレンジスーパー定期事業の重要部分、年金会オレンジ共済にはオレンジスーパー定期による多額の預り金が存在すること及びその資金を達夫が個人的に費消していることを認識していた。また、被告河野は、平成六年三、四月に、オレンジ保証サービス、オレンジネット、オレンジシステムサービスの各監査役に就任し、右監査役の職務を通じてもオレンジスーパー定期事業について認識したり、財団法人の設立にも極めて積極的に参加して、右事業の危険性についても認識した。以上のとおり、被告河野は、達夫、百男らがオレンジスーパー定期事業による預り金を流用していることを認識していたにもかかわらず、同事業を積極的に推進したのであるから、原告らに対し、共同不法行為責任を負う。
【被告河野の主張】
被告河野は、みき子から依頼を受け、自らの会計事務所において年金会オレンジ共済の従業員の給与に関する税務処理を行い、また、百男から依頼されて、オレンジシステムサービス、オレンジネット及びオレンジ保証サービスの決算書類を作成するという税理士としての仕事をしていたにすぎない。年金会オレンジ共済の事業については、百男から立ち入らないように言い渡されており、何ら関与していないし、関与できる立場にもなかった。
9 被告中島について
【原告らの主張】
オレンジスーパー定期事業によって大規模な詐欺被害が生じた一因として代理店制度があるところ、代理店は、顧客の犠牲の上に、代理店登録料を遙かに上回る代理店手数料を得るものであるが、顧客に金銭を出捐させることにより自己の利益を得る地位にあり、また、いわば単にその地位にあるというだけで、手数料を得ることができ、かつ、それが各自の権益として保障された地位にあった。
ところで、媒介を業とする者は、これを信頼して取引に入った顧客に対し、直接の委託関係はなくても、信義則に基づき、その取引の本質的な重要事項につき調査確認すべき業務上の注意義務を負うが、代理店は、オレンジスーパー定期契約等の媒介を業とし、実質は顧客の預り金から自己の収入を得ている者であり、かつ、オレンジスーパー定期事業のように一般人から金銭を受け入れその運用によって金銭で反対給付をすることを目的とする取引の場合は、その資金運用の成否が取引の本質的な重要事項であり、また、オレンジスーパー定期事業のように出資法に違反する営業の部類に属する取引の媒介をすることは、出資法に違反する行為を幇助することであるから、それ自体禁止された行為であるところ、このように禁止された違法な営業に関与した者は、さらに、現実に顧客に損害を与えることがないように、公序良俗に基づき、営業の適法性等を調査確認し、顧客に対し契約の締結を回避させるべきである(オレンジスーパー定期事業が、不特定多数の顧客を対象としたものであって、出資法に違反するものであることは、認識していたか容易に認識することができた。)から、被告中島は、原告らに対し、オレンジスーパー定期事業の適法性及び資金運用の方法について調査確認する義務を負っていた。また、被告中島は、年金会オレンジ共済組合の定款により、組合の役員として理事・監事と同様に善管注意義務を負っていた。
しかるに、被告中島は、オレンジスーパー定期事業の適法性及び資金運用の方法について調査確認する義務を怠り、被告石崎や被告益川らの言を軽信し(単に、年金会オレンジ共済本部から説明を受けただけでは、調査確認義務を尽くしたとはいえない。)、原告らを、達夫らの企てた詐欺商法に巻き込んで被害を与えた過失がある。
被告中島の過失相殺の主張は争う。
【被告中島の主張】
現職の国会議員の犯罪と不法行為は、その身分と地位とともに法律によって守られており、通常一般人が努力しても調査確認することは不可能であったから、被告中島について調査義務違反はあり得ず、過失はない。また、年金会オレンジ共済は、地域で信用のある者を、自らの詐欺行為の手足として利用したのであって、被告中島も被害者の一人であるから、不法行為者ではあり得ない。さらに、預り金の中から収入を得たことから直ちに調査確認義務が生ずるとはいえない。そして、被告中島は、代理店といっても、独立の営業者ではなく、資金運用について数度にわたり調査確認したが、確認できなかったものであり、また、出資法違反の事実は立件されていないし、手数料の率は異常な高率ではなく、被告中島がオレンジスーパー定期の違法性に気付くことはできなかった。原告らは、高金利につられ、投資目的で進んでオレンジスーパー定期に加入したのであるから、被告中島に責任はない。
仮に、被告中島に責任があるとしても、原告らにも重大な過失があるから、五割以上の過失相殺がされるべきである。
10 被告滝田について
【原告らの主張】
被告滝田は、代理店ではないが、オレンジスーパー定期契約等の媒介に業として従事し、代理店の下部組織としてあるいは協力関係において代理店手数料の配分に与っていたから、代理店と同様に、原告らに対し、オレンジスーパー定期事業の適法性及び資金運用の方法について調査確認する義務を負うところ、これを怠り、被告中島の言などを鵜呑みにして、原告らを詐欺商法の犠牲者とした点に過失がある。
【被告滝田の主張】
原告らにオレンジスーパー定期を紹介するに当たっては、商工会議所の共済とは一切関係ない旨を告げている。また、オレンジスーパー定期に加入することを決断したのは原告ら本人である。
第三当裁判所の判断
一 事実関係について
1 達夫の生活状況、年金党、年金会等
達夫は、昭和五八年一一月、政治団体「年金党」を結成して、自らその代表者に就任し、同年一二月の衆議院議員選挙に立候補したが、落選した。
そこで、達夫は、参議院比例代表選出議員の選挙に立候補することを計画し、昭和六一年五月、年金党及び達夫の政治活動を支援することを目的とする政治団体「年金会」を設立し、当時の住居であった東京都中央区日本橋中州所在のハイツ日本橋中州三〇三号室を主たる事務所とし、みき子を代表者と定めて、自治大臣及び東京都選挙管理委員会に政治団体設立届を提出した。右政治団体設立届に添付された規約には、年金会の事業として、講演会の開催、機関誌の発行、年金額を引き上げるためのあらゆる活動と並んで、「会員相互の共済活動(オレンジ共済)」が掲げられていた。
そして、達夫は、昭和六一年七月の参議院比例代表選挙、平成元年七月の参議院比例代表選挙及び平成四年七月の参議院比例代表選挙に、いずれも年金党から立候補したが、落選した。
(甲一一、乙イ四、五、乙コ一二ないし一六、一九、三一、五四の3、被告勝、被告大久保)
2 生命共済事業及び預り金事業
(甲一一、五七の1、2、乙コ一、一〇、一七、被告大久保、弁論の全趣旨)
(一) 達夫は、昭和六三年当時、古くからの負債に加え、度重なる選挙のための借金等により、多額の負債を抱え、生活費にも窮する状態となっていた。そこで、達夫は、平成元年七月の参議院比例代表選挙の選挙資金、負債の返済資金、生活費等を得る目的で、昭和六三年一〇月ころ、実施主体の名称を「年金会オレンジ共済」として顧客から生命共済の掛金を受け入れる事業(以下「オレンジ生命共済」又は「オレンジ生命共済事業」という。)を開始した。なお、被告大久保を含む年金党の他の役員は、オレンジ生命共済事業を始めるには必要な資金がなく、何らの資金的な準備もなく右事業を始めることは詐欺的な行為に当たるとして反対したが、達夫は、反対する役員を辞めさせて、右事業を開始した。
オレンジ生命共済の内容は、当初、掛金(掛け捨て)が月額一七〇〇円、死亡時保障額が一〇〇〇万円であったが、後には、掛金(掛け捨て)が月額二〇〇〇円、交通事故による死亡時保障額が一二五〇万円、不慮の事故による死亡時保障額が七五〇万円であった。
(二) 達夫は、平成元年七月の参議院比例代表選挙の選挙資金に、オレンジ生命共済の掛金として受け入れた金員を流用したが、不足したため、さらに借金をしたので、負債は益々増大した。そこで、達夫は、その頃から、借金の返済等の目的で、年金会代表友部みき子名義の小切手を大量に振り出し、その場しのぎをするようになった。
達夫は、負債の返済資金、小切手の決済資金、生活費等を得る目的で、みき子及び百男とともに、年金会オレンジ共済として、預り金名下の金員受入れ事業を開始することとし、平成三年三月ころ、オレンジ年金の名称で、顧客から、元本保証の上、据置期間を一年として、一口一〇万円以上の預り金を受け入れ、年一二・〇四パーセントの利息を支払うことを約する事業を開始した。
(三) しかし、オレンジ年金として受け入れた資金は、当初から運用することは何ら予定されておらず、達夫の負債の返済、生活費、選挙資金等に費消することが予定されており、支払うことを約した利息も何ら運用予想に基づくものではなく、オレンジ年金は、顧客を騙して金員を受け入れるものであった。
なお、当初、オレンジ生命共済及びオレンジ年金に関与したのは、達夫ほか二名であり、ハイツ日本橋中州三〇三号室を事務所に使用し、その規模も零細なものであった。
3 代理店制度の導入
(一) 平成四年四月ころ、年金会代表友部みき子振出名義の小切手が不渡りになった。ところで、被告石崎は、平成三年ころから、金融業者の持ち込んだ年金会代表友部みき子振出名義の小切手を自ら割り引き又は他の割引先を紹介するなどしており、右不渡りが出た当時、右小切手に関する債権は合計約五〇〇〇万円に達していた。
被告石崎は、右債権を回収するため、平成四年四月ころから同年六月ころにかけて、ハイツ日本橋中州三〇三号室を訪れ、達夫らと交渉したが、その窮状を知って、右債権の回収は不可能と判断した。そして、その際、被告石崎は、年金会という団体がオレンジ共済の名称で生命共済事業をしていることやオレンジ年金という預り金の商品があることを知るとともに、達夫ほか二名が、集めた資金を負債の返済、生活費等に費消してしまっており、何ら資金運用が予定されていないものであることも知った。
そこで、被告石崎は、オレンジ年金事業を利用しようと考え、達夫ほか二名に対し、オレンジ生命共済及びオレンジ年金において、代理店制度を導入してその規模を全国的に拡大することを提案し、達夫ほか二名は、これに同意し、平成四年六月一日ころ、被告石崎との間で代理店募集の委託契約を締結した。そして、そのころ、達夫ほか二名と被告石崎は、オレンジ年金による預り金は、金利の高い韓国、オーストラリア、スペイン等で運用していることにする旨打ち合わせた。
被告石崎は、平成四年七月ころから、東京都板橋区内のマンションの一室に事務所を構え、「オレンジ年金企画」の名称で年金会オレンジ共済の代理店の募集を開始し、次いで、平成五年一二月三日、オレンジ年金企画株式会社(以下「オレンジ年金企画」という。)を設立して、代理店募集業務を行うようになり、また、平成七年六月ころからは、「オレンジ信販」の名称で貸金業の登録をして、代理店希望者に対して、代理店登録に必要な費用を貸し付けることも始めた。
このようにして、被告石崎は、平成八年九月までの間に、全国各地に約二一五店のオレンジ共済支部と称する代理店を設け、総額二億円余の報酬を得た。
(甲一一、二五、二六、五五の1、2、五六の1、2、五七の1、2、乙コ三、四の1、2、五ないし九、二〇の1、2、被告中島)
(二) 右代理店制度において、代理店希望者は、特定地域における営業独占権を取得する対価として、一五〇万円(その地域の人口が三万人の場合)ないし五〇〇万円(右人口が三〇万人の場合)の契約金(代理店登録料)を支払うものとされ(右金員の内、半額が「地域権利金」、半額が「加盟金」とされ、地域権利金は代理店をやめる際に返還される預託金であった。)、加盟金を被告石崎が代理店募集業務の対価として取得し、地域権利金を達夫ほか二名が取得するものとされた。一方、代理店に対しては、オレンジ生命共済及びオレンジ年金のパンフレット、申込書、振り込み用紙及び封筒・名刺等が支給された。
そして、代理店に対しては、手数料として、顧客がオレンジ生命共済に新規に加入した場合は、初年度は掛金の四〇パーセント、二年目は三〇パーセント、三年目以降は二〇パーセントがそれぞれ支払われるものとされ、また、顧客がオレンジ年金に新規に加入した場合は、預り金額の一〇パーセントが支払われるものとされた。なお、オレンジスーパー定期ないしオレンジスーパーファンドに加入した場合は、据置期間一年(一年定期)の場合、預り金額の六パーセント、据置期間三年(三年定期)の場合、預り金額の九パーセントがそれぞれ支払われるものとされた。
(甲一一、二七、二八、五五の1、2、五六の1、2、五七の1、2、乙コ二〇の1、2、五七、五八、被告中島)
4 その後の展開
(一) 平成四年九月ころ、ある代理店から、「オレンジ年金」の名称では、顧客を勧誘しにくいので、「スーパー定期」の名称に変更してほしい旨の要望があったことから、オレンジ年金についてオレンジスーパー定期の名称が用いられることになった。また、達夫ほか二名は、平成四年一〇月には、年金会オレンジ共済の本部事務所を、ハイツ日本橋中州三〇三号室から、東京都中央区日本橋浜町所在の花岡ビル七階(以下「オレンジ共済本部事務所」という。)に移転した。
被告益川は、平成四年一一月ころ、百男の勧誘を受けて、年金会オレンジ共済で働くようになったが、その後、百男及び被告石崎から、出資法との関係で、「不特定かつ多数からの預り金」ではないというため、必ず共済への加入金二〇〇円を受け取ることが必要である旨説明された。被告益川は、当初は、書類の整理や顧客の台帳の整理等を担当しており、オレンジ生命共済及びオレンジスーパー定期に運用の実態がないことを知らなかったが、資金運用に関する動きがなく、運用先からの連絡もないことから、資金の運用について疑いを抱くようになった。
そして、被告益川は、平成五年三月ころ、ある代理店から、「韓国の金利は七パーセントよりもずっと低い。」と指摘されたため、達夫、百男及び被告石崎に対し、その点を確かめたところ、実際には運用していないことを打ち明けられ、顧客に対し、運用について嘘の説明をしていたことを知り、さらに資金運用の実態がないことも分かり、顧客に虚偽の説明をして預り金を騙し取っていることを知った。そして、被告益川は、同年四月ころ、総務課長に就任し、オレンジ生命共済やオレンジスーパー定期の契約書・伝票の管理等をするようになった。
(甲一一、五五の1、2、五六の1、2、五七の1、2、六〇)
(二) 平成四年一〇月ころから、代理店契約を締結した者を対象に、代理店研修会が開催されるようになった。
代理店研修会は、当初は、百男と被告石崎が現地に出向き、代理店契約を締結した者に対して説明をするという形式を採用していたが、平成五年五月ころからは、オレンジ共済本部事務所で開催されるようになり、平成六年二月ころからは、オレンジ共済本部事務所で毎月一回定期的に開催されるようになった。代理店研修会への参加は、当初は任意であったが、同年四月ころからは、代理店契約を締結する過程で、先ずは仮契約を締結し、代理店研修会を経た上で本契約をするという制度を採用することになったことから、参加が強制されるようになり、結果的にはほとんどの代理店は代理店研修会に参加した。
代理店研修会では、被告石崎と被告益川が中心になって、各種の説明がされたが、その中で、被告石崎と被告益川は、運用益が一七から二〇パーセントある、信用のある企業に二〇〇〇万円を限度に貸し付けており不良債権は一切ない、スペインやオーストラリアなどの外国で運用している、共済の加入者は五、六万人くらいいるなどの虚偽の説明をした。また、代理店研修会では、被告石崎が作成した代理店向けの営業マニュアル(セールスマニュアル)、案内文が配られ、被告石崎によってチラシの配布方法、ダイレクトメールの送付の方法、代理店による勧誘の方法などの説明がされた。このようにして、代理店は、虚偽の勧誘文言の教示を受け、これを用いて顧客を勧誘した。なお、被告益川は、代理店研修会において、会員又は組合員のみの特典であって、不特定かつ多数の者からの預り金ではないので、出資法に違反していない旨説明したこともあった。
(甲一一、二七、二九、五五の1、2、五六の1、2、五七の1、2、乙コ七、二三、二五)
(三) 年金会オレンジ共済の従業員は、平成四年九月ころは桑島隆晃(以下「桑島」という。)一名であったが、同年一一月ころには被告益川が加わり、平成五年四月ころには、新たに三人の事務員が雇用された。右三名の事務員は平成六年春ころまでには退職し、その後新たな事務員を加え、平成六年三月ころには、従業員は約七名になった。また、年金会オレンジ共済は、平成五年八月ころには、花岡ビルの八階を借り増しして、みき子及び達夫の個室や会議室などを設け、平成六年三月にも、同ビルの六階を借り増しした。
平成五年末ころから、達夫ほか二名、被告石崎及び被告益川らが参加して、役員会と称される会議が開かれるようになり、司会はみき子が務め、全国の代理店の集金状況、代理店の増加状況等が報告されたり、顧客の増やし方、代理店の拡大方法等が話し合われたり、後記5(二)のコンクールや後記6(一)のセールを行うことなどが決定されたりし、年金会オレンジ共済が破綻するまでに十数回開催された。なお、平成五年ころの役員会では、オレンジスーパー定期は出資法に触れるのではないかということが問題になり、議論されたことがあった。また、平成六年八月ころ、達夫の発案で、役員会で「オレンジ介護共済」の名称で介護共済事業(掛金は月三〇〇〇円。以下「オレンジ介護共済」という。)を開始することが決定された。
(甲一一、五五の1、2、五六の1、2、五七の1、2、六〇、乙コ二、五二)
(四) オレンジスーパー定期の内容は、オレンジ年金の当時から数回にわたって改訂されたが、平成五年ころ以降は、一口一〇万円以上とし、元本保証の上、利息は六か月ごとに年二回支払うものとされ、据置期間を一年として、年六・七四パーセントの利息を支払うものと、据置期間を三年として、年七・〇二パーセントの利息を支払うものとがあった。
なお、銀行の一年定期預金の平均金利は、年につき、平成三年三月ころ六・〇八パーセント、平成四年一月四・八二パーセント、平成五年一月三・八六パーセント、平成六年一月二・二一パーセント、平成七年一月一・八一パーセント、平成八年一月〇・五一パーセントであった。
(甲二、一一、一六、五七の2、乙コ二四)
(五) オレンジスーパー定期の加入手続は次のようになっていた。すなわち、顧客(会員)は、オレンジスーパー定期の申込書を代理店を通じてオレンジ共済本部事務所に送付し、同時に指定されたオレンジ共済代表者友部みき子名義の口座に振り込み入金する。オレンジスーパー定期契約等の申込書は、四枚綴りの複写式になっており、その四枚目は顧客用の控えに、三枚目は代理店(支部)用の控えになり、一枚目は、みき子を通じて、オレンジネットに送付され、契約内容がコンピュータに入力され、二枚目は被告益川がオレンジ共済本部事務所において保管していた。
右口座の通帳は、みき子が管理しており(ただし、後には、右通帳は百男が管理するようになった。)、口座に顧客からの入金があると、みき子は、桑島らに顧客の氏名・入金額等を伝達し、証書の発行を指示していた。この指示は、当初はみき子がメモを作っていたが、後には、預金通帳の一部のコピーを手渡す方法になった。指示を受けた桑島らは、「本証書は、オレンジ共済が拾周年記念の特別利回りとして、平成四年六月一日に取り行われた理事会の各決議に従い、発行されたオレンジスーパー定期証書である。」等と書かれた証書を作成して各顧客に送付していた。
顧客に対する利息の支払、元本の払戻しは、各顧客の指定口座に、振り込み送金する方法で行われており、満期解約の場合や途中解約の場合には、被告益川が管理していた伝票の一枚に判を押して、みき子に引き継ぐという体制が取られていた。振り込み作業は、みき子又は百男がほとんど行っていた。
オレンジ生命共済についても、加入手続は以上と同様であった。もっとも、オレンジ共済加入証書には、右端にミシン目で切り離すことができる「会員証」が添付されていた。
(甲二、一三の1、一五、一六、五五の1、2、五六の1、2、六〇、乙コ二三、二四、被告中島)
(六) 達夫ほか二名及び被告石崎は、オレンジスーパー定期事業を開始した当初から、同事業が、出資法に違反するのではないかとの疑いを抱いており、このような疑いを払拭するために、オレンジスーパー定期の預託には必ず年金会への加入金として二〇〇円を納めることが必要である旨を取り決めていた。
平成七年一〇月ころ、弁護士から、オレンジスーパー定期のそれまでの預り金という形式では出資法に触れるので、以後は、会員から貸付けを受けた形式に変更すべきであると助言された。
そこで、各会員から預り金から貸金への形式の変更について承諾を取ることとし、代理店にその旨の連絡をしたところ、代理店から、そうすると多くの会員が解約してしまうのではないかとの指摘がされたため、「(貯蓄型)オレンジスーパー定期」の名称を「(貯蓄型)オレンジスーパーファンド」の名称に変更した上、スーパー定期契約申込書をスーパーファンド契約書とし、加入年月日の欄を加え、表題の一部に「(組合員社内預金申込書)」との記載を追加するなどした新たな申込書を作成したに留まり、実質は変わらなかった。
(甲二、三、一一、一六、三四、五五の1、2、五六の1、2、五七の1、2、乙コ二四、被告中島)
5 財団法人の設立及び達夫の当選
(一) 年金会オレンジ共済では、その信頼性を増し、オレンジ生命共済やオレンジスーパー定期等を集めやすくする狙いもあって、比較的初期の段階から、将来財団法人を設立する方針であることを表明しており、代理店研修会等でもその方針を説明していた。
達夫は、設立代表者として、平成七年六月、弁護士を介して、文部省に「財団法人二一世紀青少年育英事業団」の設立申請をした。達夫及びみき子は、同年八月二三日ころ、右弁護士から、右申請の経過について報告されたが、その中で、右弁護士は、文部省から、年金会オレンジ共済の業務内容について出資法違反の疑いがあると指摘されたとした上、オレンジ共済新宿支部作成名義のパンフレットの記載内容(貯蓄型オレンジスーパー定期 元本保証確定利回り 一年六・七四% 三年七・〇二%の高率 共済加入者のみのお取扱い商品)は出資法違反であると指摘し、早急に対処するよう求めた。
当初、財団法人設立の出資金は、達夫が全額拠出することが予定されていたが、文部省から、それは公職選挙法に抵触する恐れがあるので、拠出者を変更するように指導があったことから、後には、年金会オレンジ共済等で分担して拠出する方針に変更された。ところが、文部省から、さらに、年金会オレンジ共済が任意団体であることから、経常費支出につき「きちんとした団体として支出するように」との指導を受けたため、達夫側において、年金会オレンジ共済を会社等の法人にすることも検討されたが、最終的には、設立が簡単であるという弁護士の助言もあり、民法上の組合の形式を取ることになった。
そこで、年金会オレンジ共済は、平成七年八月末日から同年九月にかけて、代理店及び会員に対し、挨拶状と題する文書及び御挨拶と題する文書を送付して、任意団体から民法上の組合に改組する旨通知した。また、以後、オレンジスーパー定期の申込書やパンフレット等で使用されていた「年金会オレンジ共済」の名称は、順次「年金会オレンジ共済組合」の名称に変更され、形式的には事業主体が年金会オレンジ共済組合となった。
平成七年一〇月一日、花岡ビルで、年金会オレンジ共済組合・第一回理事会と称される会合が開催されたが、右会合には、少なくとも、みき子、百男、被告石崎、被告益川及び被告大久保が出席し、弁護士から、財団法人の設立のために理事会議事録を作成する必要がある旨の説明を受けた。その後、弁護士が起案した年金会オレンジ共済組合・第一回理事会議事録と題する書面に、持ち回り式で、みき子、百男、被告石崎、被告益川、被告哲男、被告勝、被告大久保、被告鯉江、被告幸雄及び松田俊文が署名した。
財団法人の名称は、後に「財団法人二一世紀国際奨学財団」と変更され、また、設立代表者もみき子に変更された。平成七年一一月一八日には、東京都中央区のホテルで年金会オレンジ共済組合・第二回理事会と称される会合が開かれ、少なくとも、みき子、百男、被告石崎、被告益川、被告大久保及び被告幸雄が出席し、弁護士から、財団法人の設立申請の経緯等について説明を受けた。
その後、文部省による認可手続は進展しなかったことから、既存の財団法人を買収する手段が検討されることになり、被告石崎らが、買収できる財団法人を探し出し、平成八年八月には、みき子、百男、被告石崎、被告益川、被告大久保らが、財団法人中日本オートスポーツ研修センターの理事に就任した。
(甲八、一〇の1、2、一一、一七ないし一九、二三、二四、三九、四〇、五五の1、2、五六の1、五七の1、2、五八の1、2、五九、六〇、乙イ一の1、2、乙コ一八、一九、二二、二七の1、2、被告勝、被告大久保、被告鯉江)
(二) 平成七年七月の参議院議員選挙に関連して、達夫は、平成六年一〇月ころから平成七年九月ころにかけて、関係のある政治家に対し、合計一億円を超える金員を交付したほか、後日、達夫が政界工作資金として関係者に数億円を交付したとも新聞報道された。
平成六年一一月から同年一二月にかけて、ボーナスセールと称して契約獲得上位の代理店に賞品を与えるというコンクールが実施され、右期間、代理店手数料は、据置期間一年のオレンジスーパー定期で七パーセント、据置期間三年のオレンジスーパー定期で一〇パーセントと引き上げるなどして、顧客獲得が計られた。
平成六年一二月二〇日、ロイヤルパークホテルにおいて、「年金会オレンジ共済創業十周年記念忘年会」、「友部達夫と年金会の躍進を祝う会」の名称でパーティーが開催されたが、このパーティーには、多数の代理店が招待されたほか、政治家等が来賓として出席した。
また、平成七年七月四日には、ホテルオークラで「新進党友部達夫必勝全国支部長大会」との名称のパーティーが開かれ、多くの代理店が招待されたが、このパーティーは二部に分けられていた。第一部では、弁護士が財団法人を設立する旨の説明をし、各テーブルの上に、年金会オレンジ共済組合の定款とともに財団法人理事・評議員の名簿が配られた。第二部では、総決起集会が行われ、いわゆる大物政治家が達夫を支援・支持する旨の演説をした。
(甲一一、四〇ないし四八、五五の1、2、五六の1、2、五七の1、2、乙コ二六、二七の2、二九、五〇の4ないし6、五四の5、6、被告中島、被告大久保)
6 当選前後の状況及び発覚
(一) 達夫が参議院議員に当選した後は、オレンジスーパー定期事業において、達夫が参議院議員であることが積極的に利用されるようになった。
年金会オレンジ共済では、財団法人が設立認可の運びになったとして、平成七年八月一四日から同月三一日までの間、「スーパー定期・財団法人二一世紀青少年育英事業団・記念セール」を実施し、右期間内の代理店手数料の割合を、一年定期につき七パーセント、三年定期につき一〇パーセントと上げるとともに、一〇〇〇万円以上のオレンジスーパー定期を獲得した代理店は、財団法人の役員に推薦するとして、オレンジスーパー定期の獲得を推進した。
平成七年一二月ころ、代理店(東広島支部)の宣伝活動に関し、大蔵省財務局金融課から、出資法違反の疑いがあるとの指摘を受けたり、消費者センターからも出資法違反の疑いがあるとの指摘が七、八件あった。
達夫及び百男は、平成七年九月、被告大久保らとともに、選挙で応援を受けた政治家二名を接待したり、百男は、平成八年六月、被告大久保とともに、右二名を接待したりした。また、百男は、オレンジスーパー定期の預り金として受け入れた金員の中から、外車の購入費、高級熱帯魚の購入・飼育費、クラブの飲食費等の遊興費等として、多額の金員を費消していた。
(甲一一、四一ないし四八、五五の1、2、五六の1、2、五七の1、2、五九、六一、乙コ二八、五〇の1ないし3、五四の2、被告中島、被告大久保)
(二) 平成八年九月一三日、毎日新聞が年金会が「無許可で共済組合」を運営しているなどと報道したことをきっかけとして、新聞、テレビ等で年金会オレンジ共済組合について出資法違反の疑いがあるなどの報道がされるようになった(なお、それまでは元本・利息とも普通に支払われていた。)。
これに対して、同月一七日ころ、各代理店に対し、年金会オレンジ共済組合(常務理事・被告益川)名義の書面や達夫名義の「今回のマスコミ報道に対するコメント」と題する書面を送付し、新聞・テレビによる報道は誤りであり、年金会オレンジ共済組合は違法な行為をしていない旨強調したり、同月一九日ころ、会員に対し、「会員の皆様へ」と題する書面を送付し、中途解約に応ずる、解約申入れ後一か月程度の時間はかかるが返還自体は確実である旨強調したりして、事態の沈静化を図った。また、年金会オレンジ共済は、同月二六日、達夫、みき子、被告益川、弁護士らの出席の上、代理店を集めて、マスコミ報道に関する説明会を開催し、オレンジスーパー定期は出資法に違反するものではない、しかし、将来的には新規の契約はしない方向で考える、資金的な不安は一切ないなどと弁明した。さらに、同年一〇月には、右説明会の席で配布されたものと同旨の文書を各代理店に送付した。
しかし、オレンジスーパー定期をした多数の会員が、オレンジスーパー定期を解約し、また、オレンジスーパー定期の預り金の返還を求めてオレンジ共済本部事務所に押し掛けるなどし、いわゆる取付け騒ぎのような状態になった。そこで、年金会オレンジ共済組合名義の同月二五日付け「声明」と題する文書を代理店及び会員に送付し、原則として中途解約には応じられない旨通知した。
また、達夫及び被告益川は、弁護士の立会いの上、同年一一月一日、代理店に対し、説明会を行い、返済資金は十分にあるなどと説明をした。しかし、年金会オレンジ共済組合は、同月一二日、出資法違反容疑で家宅捜索を受け、同年一二月ころ、事実上の倒産状態になり、結局、二〇〇〇人以上の会員に対する六〇億円近い預り金が返還不能になった。
(甲五の1ないし7、六、七の1ないし5、一一、一四の1ないし4、四七、五六の1、五七の2、六二の1、2、乙コ三六ないし四三、四四の1ないし3、四五、四六、五〇の1ないし3、五四の3、4、五七、乙サ一、被告中島)
7 各被告の関与状況
(一) 被告石崎
被告石崎は、平成四年四月ころから同年六月ころにかけて、債権回収のため、達夫ほか二名と会って協議していた過程で、オレンジ生命共済やオレンジ年金について知るとともに、何らの運用の実態も伴わない詐欺商法であることを知った。
その後、被告石崎は、代理店説明会において、代理店に対し、オレンジスーパー定期及びオレンジ生命共済に関する虚偽の勧誘文言を教示し、営業マニュアルを作成し、さらに、オレンジ年金企画を設立して、多数の代理店を勧誘するなどした。そして、被告石崎は、代理店募集の報酬として、合計二億円以上を得た。
また、被告石崎は、達夫が、オレンジ生命共済やオレンジスーパー定期として受け入れた金員のうち多額な金員を政治資金として流用していることを知っていた。
(前記3(一)、4(一)、(二)の事実、甲五七の1)
(二) 被告益川
被告益川は、元文京区議会議員であり、副議長まで勤めたものであるが、平成四年一一月ころから、年金会オレンジ共済で働くようになった。
被告益川は、平成五年三月ころ、オレンジスーパー定期による預り金の運用について嘘の説明をしていたことを知り、オレンジスーパー定期等が代理店を介し顧客を騙して金員を受け入れる詐欺商法であることを知った。被告益川は、その後、被告石崎とともに、代理店研修会において、講師として、代理店に説明をし、その勧誘文句を用いて、会員を募集するよう指導したが、右説明及び勧誘文句の各内容は虚偽であった。
また被告益川は、年金会オレンジ共済から給料として約一八〇〇万円を得たほか、顧客を代理店に紹介してリベートを得たり、仮名で代理店を経営して手数料を得たりしたが、その額は合計約二五〇〇万円に達した。
(前記4(一)、(二)の事実、甲五六の1、2)
(三) 被告哲男
被告哲男は、昭和五一年ころまで、達夫らと同居していたが、昭和五三年ころから、一人で生活するようになり、昭和五七、八年ころ、年金党の選挙を一時手伝った外は、達夫らともほとんど交流がなくなった。
平成六年一二月、哲男は、みき子、百男及び被告大久保から、「年金会オレンジ共済創業十周年記念忘年会」、「友部達夫と年金会の躍進を祝う会」に参加するように求められたが、断った。
被告哲男は、平成七年四月、みき子から年金会オレンジ共済で働くように求められ、同年七月には、みき子及び百男から年金会オレンジ共済で働くように求められたが、断っていたところ、さらに、被告大久保からも説得されて、平成七年八月中旬から働くようになり、ほぼ毎日のように出勤しており、しばらくして総務課長代理になったが、その後、年金会オレンジ共済には、本部と支部(代理店)があり、全国各地の支部が顧客を募集し、本部に金銭が集まってくることを知った。
被告哲男は、年金会オレンジ共済において、約五〇万円の月給を支給され、当初はオレンジ生命共済の調査係を担当していたが、その後、他の職員が仕事を覚えるために電話の応対マニュアルを作成することになり、「業務に関わるルールとマナー」との表題のマニュアルを作成した。右マニュアルの内容は、ほとんどが電話の受け答えや封書の書き方、仕事上の心構えなどの一般的事項を説明したもので、オレンジスーパー定期等の年金会オレンジ共済の業務内容に触れる部分はなかった。また、被告哲男は、右のマニュアルの外に、オレンジスーパー定期等の年金会オレンジ共済の業務内容に関するマニュアルの作成にも取りかかり、他の従業員の電話の応対内容を録音するなどしていたが、完成しなかった。
被告哲男は、平成七年一一月、年金会オレンジ共済の関連会社であるオレンジシステムサービス、オレンジネット及びオレンジ保証サービスの取締役に就任した旨の登記がされ、その頃から、前記月給はオレンジシステムサービスから支給されるようになった。
なお、被告哲男は、前記4(三)の役員会に参加したことはなかった。
(甲一二の1ないし3、五五の1、2、五六の1、2、五七の1、2、六〇、乙イ一の1、2、三ないし五、被告哲男、被告大久保)
ところで、被告哲男は、平成八年四月一七日に退職願を提出して年金会オレンジ共済等を辞めた旨主張し、乙イ第二号証、第四号証及び被告哲男本人の供述中には、右主張に符合する記載及び供述部分があるところ、乙イ第二号証は、平成八年一二月三日作成のものとはいえ、本件訴訟が提起される以前の書面であるから、それなりの信用性がある上、甲第六〇号証(桑島の尋問調書)にも、被告哲男は平成八年六月ころにはいなかった旨の記載があるから、乙コ第三二号証の4(平成八年五月発行の新聞)に被告哲男が第二十八総支部の企画広報委員長として記載されていたとしても、乙イ第二号証、第四号証及び被告哲男本人の供述が直ちに採用できないとはいえず、被告哲男が、原告和田がオレンジスーパー定期契約をした平成八年四月二五日当時、年金会オレンジ共済等に勤務していたことは認め難い。
(四) 被告勝
被告勝は、昭和四四年ころから平成八年ころまで金融業を営んでおり、約三〇年前、被告大久保と知り合い、約二〇年前、被告大久保から紹介されて、達夫と知り合った。
被告勝は、平成六年九月ころ、被告大久保から年金会オレンジ共済の仕事を手伝ってほしい旨要請され、同年一二月には、ロイヤルパークホテルにおける「年金会オレンジ共済創業十周年記念忘年会」、「友部達夫と年金会の躍進を祝う会」に出席し、被告大久保と一緒に九州まで挨拶回りをするなどして、達夫の選挙運動を手伝った。
被告勝は、右パーティーの翌日に、被告大久保及び被告益川から、年金会オレンジ共済の事業内容について説明を受け、平成七年一月、一五〇万円の代理店登録料を支払って、年金会オレンジ共済の代理店(宇都宮支部長)になり、自ら預け入れたり、家族、親戚及び友人を勧誘して、合計約三七五〇万円のオレンジスーパー定期を集めた(なお、本人及び家族分については預り金の返還を受けていない。)。
被告勝は、平成七年七月の参議院議員選挙の後から平成八年九月にマスコミ報道がされるまでの間に、被告大久保の依頼を受けて、百男に対し、無担保で、四、五回にわたり、総額約一億円を貸し付けるなどした(残債権約三〇〇〇万円)。もっとも、被告勝は、宇都宮に居住しており、オレンジ共済本部事務所へは、一二、三回しか行ったことがなく、オレンジスーパー定期等の年金会オレンジ共済の事業にはほとんど関与したことがなかった。
被告勝は、平成七年一〇月ころ、被告大久保から、財団法人設立のために名義を貸してほしい旨依頼されて、年金会オレンジ共済組合・第一回理事会議事録の理事署名欄に署名した。
被告勝は、平成七年一二月までの間に、オレンジ共済本部事務所で、「理事(総代)」として自分の名前が記載された年金会オレンジ共済組合の役員名簿を見たが、その頃、不安を抱き、百男に対し、役員にはなれないので辞退したい旨伝えた。
被告勝は、平成八年四月当時、第二十八総支部組織委員長であったが、具体的な仕事はしていなかった。
(甲五五の1、2、五七の1、2、乙ウ一、乙コ三二の4、被告勝、被告大久保)
(五) 被告大久保
被告大久保は、達夫の経営していた貸金業「シーエッチ商事」に常務取締役として勤務していたことがあったほか、自ら貸金業を営んでいたこともあった。
被告大久保は、昭和六三年ころ、ハイツ日本橋中州三〇三号室において、達夫及びみき子と同居しており、年金党の事務局長をしていた。そのため、被告大久保は、達夫が何度も国政選挙に立候補しては落選しており、負債を抱え、日々の生活にも困窮する状況であることを知っていた。被告大久保は、達夫がオレンジ生命共済を開始するに当たっては、資金的準備がないのに生命共済事業をするのは詐欺的行為であるとして反対したため、達夫より年金党の役職を罷免された。
被告大久保は、平成六年七月ころから、年金会オレンジ共済本部に勤務するようになり、共済加入者の病院調査や共済給付金の支給などの職務に従事したが、その後、前記4(二)の代理店研修会に一、二回は参加したり、前記4(三)の役員会にも数回は参加した。
同年八月ころ、達夫の発案でオレンジ介護共済が開始したが、被告大久保は、事業として成り立つ業務であるかを危惧して、これに反対した。
被告大久保は、被告哲男が、平成六年一二月ころ及び平成七年二月ころ、平成七年七月の参議院議員選挙に関連して、政治家に合計一億円を交付したが、その際、これに同行したり、同年七月四日、ホテルオークラで行われた「友部達夫必勝全国支部長大会」において、政治家を含む来賓の接待や会場の設営などを担当した。被告大久保は、達夫が参議院議員に当選した後、同年九月から平成八年一〇月三〇日まで、達夫の公設秘書の職にあった。また、被告大久保は、花岡ビルの六階に事務所がおかれていた参議院比例区第二十八総支部(以下「第二十八総支部」という。)の幹事長でもあったが、同支部の支出金は百男から渡された金員で賄われ、記帳は被告大久保がしていた。
被告大久保は、同年一〇月、年金会オレンジ共済組合・第一回理事会議事録の理事署名欄に自ら署名押印したほか、被告鯉江及び被告勝に理事になるように依頼して、同書面に署名押印又は署名させた。
被告大久保は、オレンジスーパー定期の利率を知り、非常に高利率であると感じたし、百男が不特定かつ多数の者からの預り金ではないから出資法の問題はないと言っていたが、念のため、弁護士に確認したところ、出資法に抵触するので、民法上の組合に組織変更した方がよいという話を聞いたこともあった。また、被告大久保は、百男が年金会オレンジ共済の仕事をしていることを知っていたが、百男の部屋の様子等を見て随分金を儲けたと思ったりした。
(甲八、四〇ないし四七、五五の1、2、五六の1、2、五七の1、2、六〇、乙コ五七、被告勝、被告大久保)
(六) 被告鯉江
被告鯉江は、みき子のいとこであって、達夫やみき子と親戚付き合いがあり、年金党から一度立候補して落選したこともあった。また、被告鯉江は、達夫が国会議員選挙に何度か立候補しては落選したことを知っており、生活が苦しいのなら、選挙をやめたらどうかと迫ったこともあった。
被告鯉江は、平成六年一二月、いとこの被告大久保から誘われて、「年金会オレンジ共済創業十周年記念忘年会」、「友部達夫と年金会の躍進を祝う会」に、従業員数名を連れて出席したり、平成七年七月の「新進党友部達夫必勝全国支部長大会」に出席したり、達夫の選挙活動を手伝ったりした。
被告鯉江は、達夫が参議院議員に当選した後は、同人の私設秘書となり、主に国会と花岡ビル六階の第二十八総支部との間を行き来していたが、同ビル七階のオレンジ共済本部事務所に行ったこともあった。被告鯉江は、平成八年四月からは、第二公設秘書になり、被告大久保が同年一〇月三〇日に第一公設秘書を辞めてからは第一公設秘書になり、現在もその職にある。また、被告鯉江は、第二十八総支部の総務委員長として、新進党解党まで総務一般の仕事に携わっていた。
被告鯉江は、財団法人設立のためとして署名押印を求められて、年金会オレンジ共済組合・第一回理事会議事録に署名押印した。
(甲八、一一、四九、五五の1、2、五六の1、2、五七の1、2、乙カ二、三、乙コ三二の4、五〇の4、5、被告鯉江)
(七) 被告幸雄
被告幸雄は、平成七年六月ころから達夫の選挙活動を手伝い、作業員や車両の提供、立会演説会の準備等の活動をし、報酬を得た。
被告幸雄は、同年八月ころから平成八年五月ころまでの間、多数回にわたって、達夫や百男と政治家との会食の場を設定して同席したり、五、六人の政治家を達夫や百男に紹介した。また、百男が、平成七年一二月、暴力団の忘年会に出席した際、百男から依頼されて同行するなど、百男の相談相手となっていた。
被告幸雄は、財団法人の設立に関する会合に出席したことがあり、平成七年一〇月ころ、百男から、財団法人設立のためとして署名押印を求められて、年金会オレンジ共済組合・第一回理事会議事録の理事署名欄に自ら署名押印したり、平成七年一一月一八日のロイヤルパークホテルでの会合にも出席した。また、被告幸雄は、平成八年三月ころ、百男の依頼を受けて、熱帯魚用の大型水槽・機材等の運搬作業を行ったことがあり、百男が多くの高級熱帯魚を飼育していることを知っていた。さらに、被告幸雄は、年金会オレンジ共済が財団法人中日本オートスポーツ研修センターを買収するに際し、同財団法人の債務状況の調査等を担当するとともに、平成八年八月、自ら同財団の理事に就任した。
被告幸雄は、百男の依頼を受けて、年金会オレンジ共済組合振出名義の手形・小切手の回収を行ったほか、平成八年九月ころ、現金五〇〇〇万円及び・小切手を百男のマンションからオレンジ共済組合本部事務所まで届け、また、現金三、四〇〇〇万円を百男のマンションから銀行まで運搬した。
被告幸雄は、平成七年六月ころから平成八年八月ころまでの間に、右一連の業務の対価として、オレンジシステムサービスから、合計金一二〇〇万円の報酬を受領した。しかし、被告幸雄は、オレンジスーパー定期等の年金会オレンジ共済の事業には、ほとんど係わることがなかった。
(甲二三、四七、四八、五五の1、2、五七の1、2、五九、六一)
(八) 被告河野
被告河野は、公認会計士・税理士であるが、平成四年一二月に被告河野の顧客であった被告石崎より達夫を紹介され、その後、数回にわたってオレンジ共済組合本部事務所を訪れたり、達夫の自宅を訪問したりして、達夫やみき子の相談に応じていた。なお、被告河野は、平成五年ころ、オレンジ共済の新年会や社員旅行などに参加したこともあった。
被告河野は、平成五年一月ころより、達夫とみき子の依頼を受け、月四万円の報酬で、年金会オレンジ共済で働いている従業員の給与計算及び源泉税の計算を行うようになった(右の報酬は、後には七万円に増額された。)。もっとも、右事務は、被告河野の営む税務事務所の従業員である徳永和浩が主として手がけていた。
被告河野は、平成六年一月ころ、みき子からオレンジ生命共済の会計の集計もやってほしい旨の依頼を受け、その集計をしようとしたところ、百男から資料の提出を拒否され、結局何らの集計作業もしなかった。
被告河野は、同年三、四月、年金会オレンジ共済の関連会社であるオレンジシステムサービス、オレンジネット及びオレンジ保証サービスの設立ないし商号変更に伴い、監査役に就任し、同年九月ころ、みき子から達夫が持ち出す金員に関する経理上の処理を相談されて「代表貸付け」という記載をすべきであると助言した。
被告河野は、平成七年六月ころ以降、財団法人設立のための会合に数回参加したことがあり、その中で、弁護士から、財団法人二一世紀国際奨学財団(仮称)の設立者となることを求められ、これを承諾した。また、被告河野は、平成八年六月ころ、財団法人中日本オートスポーツ研修センターの買収について、右財団の財務内容等の調査を行い結果を文部省に報告したり、新聞報道により問題化した平成八年九月以降に、弁護士から要請されて、年金会オレンジ共済の預り金について集計作業をした。
(甲一〇の2、一二の1ないし3、二三、五五の1、2、五六の1、2、五七の1、2、乙ケ一、被告河野)
(九) 被告中島及び被告滝田
被告中島は、平成三年から日本団体生命の職員で、佐野営業所に所属する保険外交員(保険募集の取締に関する法律にいう生命保険募集人)として勤務していた。また、被告滝田も、昭和五八年から日本団体生命の職員で、佐野営業所に勤務する保険外交員(生命保険募集人)であり、中島の上司であった。日本団体生命佐野営業所は、佐野商工会議所の一階にあり、「佐野商工会議所共済」との看板を掲げていた。また、両名は、佐野商工会議所から、「佐野商工会議所共済課」という名刺の使用を許可されていた。
被告中島は、平成六年六月ころ、雑誌の広告等で、年金会オレンジ共済の存在を知って興味を持ち、オレンジ年金企画に電話を掛け、被告石崎から代理店制度の説明を受けたり、同年七月ころ、オレンジ年金企画の登記簿謄本を取って同社について調べた上、オレンジ年金企画の事務所を訪れ、被告石崎から直接説明を受けたりした。被告石崎は、被告中島に対し、オレンジ生命共済等のパンフレット、選挙公報・政治団体設立届出等の各種書面を交付して、年金党や年金会の説明をするとともに、「共済は、加入率が二〇パーセントと低く、未開拓市場が残っているので有望である。」、「加入者は七万人もいて、代理店も九〇店ある。」、「二〇〇円をもらうので出資法違反にはならない。」などと説明して、代理店となることを勧誘した。被告中島は、右の勧誘に応じて年金会オレンジ共済の代理店となることとし、平成六年七月一二日、「年金会代表 友部みき子」及び「オレンジ共済代表 友部百男」との間で、代理店登録料を一五〇万円とする代理店(取次店)委託契約を締結し、同日、手付けとして一〇万円を支払い、同月二八日、残金一四〇万円を支払った。
被告中島は、そのころ、被告滝田との間で、被告滝田がオレンジスーパー定期に加入する者を被告中島に紹介した場合、契約金額の三パーセントを被告中島が被告滝田に交付する旨約し、被告滝田に対し、顧客勧誘のために、パンフレット等を交付したり、年金会等に関する資料を見せたりした。
被告中島は、平成六年一〇月から平成七年一〇月まで、五回にわたり、一〇万円ずつ(合計五〇万円)をオレンジスーパー定期に預け入れ、被告中島の実父も、平成七年四月から平成八年七月にかけて、数回にわたり、合計一四〇万円をオレンジスーパー定期に預け入れた。
被告中島は、平成六年一二月「年金会オレンジ共済創業十周年記念忘年会」、「友部達夫と年金会の躍進を祝う会」に、平成七年七月「新進党友部達夫必勝全国支部長大会」にそれぞれ参加した。
被告中島は平成七年一二月に日本団体生命を退社し、平成八年一月に大東京火災海上保険株式会社の代理店(代理店登録は、共同経営者の亀山美克(以下「亀山」という。)の名義による。)、同年三月にアリコジャパンの代理店、同年五月に関東自動車共済協同組合の代理店となった。右三社は預り金受入れ事業をしておらず、代理店手数料は、アリコジャパンは、一時払終身保険で保険料の七パーセント前後であり、大東京火災海上保険株式会社は、掛け捨ての自動車保険で二〇パーセント前後であった。被告滝田も平成八年八月に日本団体生命を退社した。
被告中島は、延べ約一〇〇件(契約額約二億五〇〇〇万円)に及ぶオレンジスーパー定期を集めたが、被告滝田は、被告中島に対し、原告らを含む約八名(延べ契約額約一億二〇〇〇万円)の顧客を紹介した。なお、被告中島は、事件発覚後、原告らを含む自己の顧客三五名に対し、手数料相当分として、前記第二の一の金員を含む合計一二一八万円余の金員を支払った。
(甲九の3、二五、三一、五一ないし五三、乙コ一、二、六ないし一九、二〇の1、2、二一、二二、三〇、三四の1ないし5、三五の1ないし5、五一、五三、五七、五八、五九の1、2、乙サ一、被告中島、被告滝田、弁論の全趣旨)
8 原告らのオレンジスーパー定期への加入
(一) 原告長吉及び原告加代子の加入
原告長吉及び原告加代子は、栃木県佐野市で自動車修理業を営んでおり、両名やその従業員が佐野商工会議所の団体生命保険に加入していたことから、被告滝田とは一〇年以上の知り合いであった。また、原告長吉は、昭和四七年ころから、三井海上火災保険株式会社の自動車保険の代理店を、平成二、三年ころからは、日産火災海上保険株式会社の自動車保険の代理店も営んでいた。
被告滝田は、平成七年八月ころ、原告長吉及び原告加代子の経営する工場の事務所を訪れ、オレンジスーパー定期のパンフレットを渡すなどして勧誘し、その後、被告中島と被告滝田は連れだって、同工場の事務所を訪れ、自治省に届出がされており、消費者金融に出資して運用し高利回りを確保しているなどと説明して、オレンジスーパー定期の勧誘をした。原告加代子は、その頃、義姉の坂本智代から預かっていた定期預金が満期を迎えたことから、坂本智代の承諾を得て、同女名義でオレンジスーパー定期に加入することにし、平成七年九月一八日、据置期間一年として一〇〇〇万円をオレンジスーパー定期にした。その際、原告加代子は、被告中島から交付された五枚一組の申込書に自ら記載し、郵便局から既製の払込み用紙を利用して一〇〇〇万円を年金会オレンジ共済本部に払い込んだ。一方、被告中島も、右申込書三枚と申込金二〇〇円を右本部に送付した。
また、原告加代子は、同年一〇月五日、義弟の和田順一に勧めて、据置期間を一年として二〇万円をオレンジスーパー定期にし、また、同年一一月一三日、原告長吉の叔母の柿沼サクにも勧めて、据置期間を一年として一五〇万円をオレンジスーパー定期にさせた。右各手続は、いずれも原告加代子が代行し、申込書及び払込み用紙は原告加代子が記入し、郵便局から振り込んだ。
坂本智代及び和田順一名義のオレンジスーパー定期については、いずれも約定どおり、加入から半年後に利息が支払われ、満期に預託金の全額と利息が返還された。また、柿沼サク名義のオレンジスーパー定期についても、半年分の利息の支払はされた。
原告加代子は、平成八年五月一三日、満期を迎えた定期預金から、据置期間を一年として一五〇〇万円をオレンジスーパーファンドにした。また、原告長吉は、同月二二日、道路拡張に伴う工場移転の補償金から、据置期間を一年として一五〇〇万円(一〇〇〇万円を一口と五〇〇万円を一口)をオレンジスーパーファンドにした。その際にも、従前と同様、原告加代子が被告滝田に連絡し、被告滝田から連絡を受けた被告中島が、原告長吉及び原告加代子を訪れ、手続に必要な書面を交付した。この際にも、原告加代子は、申込書及び払込み用紙を自ら記載し、郵便局からの振り込みの手続も自ら行った。そして、原告長吉及び原告加代子に対し、年金会オレンジ共済組合名義の、オレンジスーパーファンド証書及び「ごあいさつ」と題する書面(預金に対する礼と配当を支給する旨記載したもの)が送付された。
なお、被告益川は、平成八年夏ころ、多額の金員をオレンジスーパー定期にしたことに謝意を表するため、原告長吉及び原告加代子を訪れ、中元として商品券を渡した。
(甲三、四の1、2、五の1ないし3、一四の1、2、一六、三四、乙コ五三、五七、乙サ一、原告長吉、原告加代子、被告中島、被告滝田)
(二) 原告久保の加入
原告久保は、夫が交通事故で死亡した際に給付された共済金一〇〇〇万円を、被告滝田が手続をして日本団体生命の個人年金保険に預け入れていた。
被告滝田及び被告中島は、平成七年七月ころ、原告久保の自宅を訪れ、オレンジ生命共済及びオレンジスーパー定期の勧誘をした。その際、被告滝田及び被告中島は、原告久保に対し、オレンジ生命共済やオレンジスーパー定期のパンフレット等を示した上、自治省に届出がされており、消費者金融に貸し付けて運用し高利回りを確保しているなどと説明した。原告久保は、オレンジ生命共済に加盟した上、利率がいいこともあって、据置期間を一年として二二〇〇万円(一〇〇〇万円を二口と二〇〇万円を一口)をオレンジスーパー定期にした。
その際、原告久保は、日本団体生命の年金保険の解約手続を被告滝田に代行させ、同月二五日、日本団体生命の解約返戻金が入金されたことから、同日、被告滝田と被告中島に伴われて銀行に赴き、その後、郵便局に行って、年金会オレンジ共済本部へ振り込みの手続をし、オレンジスーパー定期にした。オレンジスーパー定期の申込書及び払込み用紙は、いずれも原告久保が自ら記入した。
右オレンジスーパー定期については、半年ごとの利息(合計一四八万二八〇〇円)が支払われ、平成八年七月に元本全額が返還された。また、原告久保には、年金会オレンジ共済からオレンジスーパー定期証書が送付されてきた。
被告滝田と被告中島は、平成八年七月、原告久保のオレンジスーパー定期が満期になった数日後に、再び原告久保の自宅を訪れ、原告久保に対し再度オレンジスーパー定期にするように勧誘したが、その際、オレンジ共済は参議院議員がしているなどと説明した。
原告久保は、これに応じ、再度オレンジスーパー定期にすることにした。もっとも、原告久保は、被告滝田と被告中島から、前回とは金額を変えてほしい旨を言われたため、同年九月三日、支払われた利息のうち一〇万円を足して、据置期間を一年として二二一〇万円をオレンジスーパー定期(一〇〇〇万円を二口と二一〇万円を一口)にした。原告久保は、この際にも、申込書及び振り込み用紙に自ら記入の上、郵便局から年金会オレンジ共済本部へ振り込みの手続をし、年金会オレンジ共済本部からは、原告久保に対し、オレンジスーパーファンド証書及びごあいさつと題する書面が送付された。
(甲四の3、五の4ないし6、一三の1、2、一四の3、一六、五三、五四の1ないし4、乙コ一、五一、五三、五七、乙サ一、原告久保、被告中島、被告滝田)
(三) 原告和田の加入
原告和田は、夫の経営する和田電気工事株式会社で経理を担当しており、右会社が佐野商工会議所の会員であったことから、従前から被告滝田とは顔見知りであった。
被告滝田は、原告和田に対し、同人宅を訪問して、平成七年三月ころ、オレンジスーパー定期のパンフレット等を示したり、その後、被告中島とともに、自治省に届出がされており、消費者金融に出資して運用し高利回りを確保しているなどと説明して、オレンジスーパー定期をするよう勧誘した。原告和田は、従前佐野商工会議所を介して加入していた日本団体生命の生命保険を解約し、オレンジスーパー定期にすることにした。
原告和田は、同年四月一二日、オレンジ生命共済(出資金二〇〇円、掛金月二〇〇〇円、掛け捨て)に加入するとともに、保険の解約返戻金を元に、据置期間を一年として一五〇〇万円をオレンジスーパー定期にした。その際、原告和田は、保険の解約及びオレンジスーパー定期の手続を、被告滝田と被告中島に代行させたため、オレンジスーパー定期の申込書及び払込み用紙等には、自ら記載することはなかったが、被告滝田と被告中島は、申込書及び払込み用紙の控えを原告和田に交付した。
さらに、原告和田は、手持ち資金三〇〇万円についても、オレンジスーパー定期にすることにし、同月二四日、据置期間を一年としてオレンジスーパー定期にした。その際にも、原告和田は、オレンジスーパー定期の手続は、被告滝田と被告中島に代行させたため、オレンジスーパー定期の申込書及び払込み用紙に自ら記載することはなかったが、被告滝田と被告中島は、申込書と払込み用紙の控えを原告和田に交付した。
右各オレンジスーパー定期については、半年ごとの利息(合計一二一万三二〇〇円)が支払われ、平成八年四月に元本全額が返還された。また、原告和田に対し、年金会オレンジ共済本部からオレンジスーパー定期証書及びごあいさつと題する書面が送付された。
原告和田は、返還された元本を元に、再度オレンジスーパー定期にすることにした。もっとも、原告和田は、被告滝田と被告中島から、前回とは金額を変えてほしい旨を言われたため、同年四月二五日、支払われた利息の一部である一〇〇万円を足して、据置期間を一年として一九〇〇万円(一〇〇〇万円一口と九〇〇万円一口)をオレンジスーパー定期にした。原告和田は、その際にも、オレンジスーパー定期の手続を被告滝田と被告中島に代行させようとしたが、郵便局で代行を拒絶されたため、原告和田が自ら、郵便局から年金会オレンジ共済本部へ振り込みの手続をした。なお、申込書については、当初原告和田が自ら記載したが、記入事項に間違いがあったことから、被告中島において、書き直したものを使用した。
原告和田に対し、年金会オレンジ共済組合名義の、オレンジスーパーファンド証書及びごあいさつと題する書面が送付された。
(甲四の4、五の7、一四の4、一五、一六、乙コ五一、五三、五七、乙サ一、原告和田、被告中島、被告滝田)
(四) オレンジ共済組合事件の発覚後の対応
原告和田は、知人から平成八年九月一三日付けの毎日新聞の記事をファックスで送付を受け、直ちに被告中島に連絡を取った。また、原告加代子もテレビ報道を見たことから、原告久保に知らせるとともに、被告滝田と被告中島に連絡を取った。
被告中島は、翌一四日から一六日までが休日であったことから、同月一七日の朝、亀山及び他の代理店の者と連れだって、オレンジ共済本部事務所を訪れ、被告益川と面談した。被告益川は、被告中島らに対し、解約については従前通り行う、何かの間違いだから達夫に記者会見してもらって断固抗議する旨を伝えた。
しかし、被告中島は、念のため、自らが代理店として取り扱ったオレンジスーパー定期のすべての契約を解除することにし、同月一八日、原告らのオレンジスーパー定期を含めて、解約する旨の書面を年金会オレンジ共済に郵送し、事後的に、原告らに対し、解約した旨を告げた。ところが、被告中島は、同年一〇月七日、原告長吉及び原告加代子が解約を取り消す旨連絡してきたことから、同日、被告益川あてに、原告長吉及び原告加代子については、解約を取り消す旨の書面を送付した。
原告久保に対し、被告中島を介して、年金会オレンジ共済組合名義の返還確認書(二二一〇万円の返還債務があることを確認し、同年一二月二〇日限りこれを返還するというもの)が送付されたが、原告久保は、同月二三日付けで、右書面には納得できず、即時に全額を返還するよう付記して、右書面を年金会オレンジ共済本部に返送した。また、原告長吉及び原告加代子に対し、右返還確認書(ただし、金額・返還月日・作成月日が空欄のもの)が送付されたが、原告加代子は、返還月日・作成月日以外を記載して、同月末日ころ、これらを年金会オレンジ共済本部に返送した。
原告長吉及び原告加代子は、同月二三日、被告中島に対し、一転して、解約する旨を年金会オレンジ共済本部に連絡したと伝えた。そこで、被告中島は、念のため、年金会オレンジ共済に電話を掛け、同様の趣旨を告げた。
(甲五の1ないし7、六、七の1ないし5、一四の1ないし4、五六の1、五七の2、乙コ三六、三八ないし四三、四四の1ないし3、四五、四六、五五の1ないし3、五六の1ないし3、五七、乙サ一、原告ら、被告中島)
9 出資法二条について
前記2ないし4に認定の事実、第二の二2(二)の事実によれば、オレンジスーパー定期事業は、反復継続して、非常に多数の顧客から、預り金を受け入れるものであることが認められるから、オレンジスーパー定期事業を営む者は、業として、不特定かつ多数の者から金銭を受け入れるものとして、出資法二条(預り金の禁止)の規定に違反するというべきである。
二 被告石崎の責任について
1 前記一2ないし4、7(一)、8に認定のとおり、オレンジスーパー定期事業は、預り金として受け入れた資金を、達夫の選挙資金、債務の返済、達夫ほか二名の生活費・遊興費等に流用する目的のものであり、資金運用が行われることが予定されていないものであるところ、被告石崎は、これを知った上で、達夫ほか二名とともに、代理店制度を設けて右事業を拡大し、代理店研修会等において、代理店に対し、虚偽の説明をし、代理店をして、顧客を騙してオレンジスーパー定期契約等をさせたものであり、原告らも、代理店の一つである被告中島を介して、平成八年四月二五日から同年九月三日までの間に、オレンジスーパー定期契約をしたものであって、被告石崎は、オレンジスーパー定期事業という詐欺商法について、達夫ほか二名とともに、中心的な役割を果たしたものである。
右事実によれば、被告石崎は、オレンジスーパー定期事業の一環としてされた原告らに対する詐欺行為について、原告らに対し、達夫ほか二名ら他の不法行為者とともに、共同不法行為責任を負うというべきである。
2 この点について、被告石崎は、オレンジ生命共済事業には関与したが、オレンジスーパー定期事業には一切関与していない旨主張し、甲第五七号証の1、2中には、右主張に符合する記載部分があるが、事実関係は前記一に認定したとおりであって、右記載部分は採用することができない。
三 被告益川の責任について
1 オレンジスーパー定期事業は、前記二1のとおりの詐欺商法であるところ、前記一4(一)、(二)、5(一)、6(二)、7(二)、8に認定のとおり、被告益川は、平成五年三月ころ、オレンジスーパー定期事業が代理店を介し顧客を騙して金員を受け入れる詐欺商法であることを知ったにもかかわらず、平成八年一一月ころまで、外部的には、代理店研修会を通じて、代理店に対し、顧客に対する虚偽の勧誘文言を教示するとともに、内部的には、総務部門を担当して、達夫ほか二名及び被告石崎とともに、オレンジスーパー定期事業を推進したものであって、その間、原告らにより、代理店の一つである被告中島を介して、オレンジスーパー定期契約が締結されたものである。
右事実によれば、被告益川は、オレンジスーパー定期事業の一環としてされた原告らに対する詐欺行為について、原告らに対し、達夫ほか二名ら他の不法行為者とともに、共同不法行為責任を負うというべきである。
2 被告益川は、違法性の意識を欠く、期待可能性がない、因果関係がない旨主張するが、右1のとおり、前記認定の事実関係の下においては、被告益川の右主張は理由がない。
四 被告哲男の責任について
1 原告らは、被告哲男ほか五名は、年金会オレンジ共済組合の理事又は監事として、オレンジ共済事業に携わっていたから、<1>年金会オレンジ共済組合の財産的基礎の確保の方法及びその実績、資金運用の具体的方法及びその実績、資金運用の具体的方法及び運用率等について調査確認する義務を負っており、また、<2>出資法違反で摘発され、オレンジスーパー定期事業が破綻することによって、顧客に損害を与えることを予見し回避する義務があり、さらに、<3>年金会オレンジ共済組合が違法な行為をしないよう監督し、不正な行為をしないよう監視し、他の役員が犯罪を行わないよう監督し、これら違法・不正な行為が行われていることを知ったときは、これを中止させるために必要な措置をとるべき定款上の注意義務を負っていたにもかかわらず、右<1>ないし<3>の注意義務を怠り、受入資金の不正流用に積極的に加担するか右不正流用を知りながら放置して、財産減少行為に加担したり、共済事業や財団法人の設立準備行為に加担して、オレンジスーパー定期事業という詐欺商法を援助・助長する行為を行ったり、年金会オレンジ共済組合の役員として、組合の財産状況の調査確認・法令違反行為の監督、他の役員の違法不正行為の監督を行わないで詐欺商法を放置し、もって、被告哲男ほか五名は、達夫ほか二名、被告石崎及び被告益川を中心としてされたオレンジスーパー定期事業という詐欺商法を推進し、あるいは放置して、これに加担したから、共同不法行為責任がある旨主張する。
しかし、年金会オレンジ共済組合が民法上の組合として成立したことを認めるに足りる的確な証拠はなく、年金会オレンジ共済組合・第一回理事会議事録(甲八)は、財団法人設立の申請に際し、その外形を整えるために作成されたにすぎないものであることは前記一5のとおりであるのみならず、年金会オレンジ共済組合の定款(甲一)によれば、理事、監事は、総代会(総会の誤記と認める。)において、出席組合員の二分の一以上の議決により選出するとされているところ、これが開催・議決されたことを認めるに足りる証拠もなく、したがって、被告哲男ほか五名は年金会オレンジ共済組合の理事又は監事ではないから、被告哲男について、その理事であることに基づく注意義務の違反を理由とする主張は、その前提を欠き、理由がない。
2 また、被告哲男が年金会オレンジ共済に勤務していた期間は、平成七年八月ころからであって比較的短い上、達夫・みき子間の長男ではあるものの、達夫ほか二名とは距離を置いており、役員会にも参加したことがないこと、被告哲男が、代理店に対し顧客勧誘方法を教示したことはなく、顧客に直接接触する部署にいたわけでもないなど前記一4(二)、7(三)に認定の事実関係の下においては、被告哲男が、オレンジスーパー定期事業が何らの運用実態も伴わない詐欺商法であることを認識しながら、達夫ほか二名らと共謀してこれを推進したとも、オレンジスーパー定期事業が違法なものであることを認識すべきであったという過失があったとも認めることはできない。なお、被告哲男が年金会オレンジ共済の業務内容に関するマニュアル(ただし、その内容は不明である。)の作成にとりかかっていたことは前記一7(三)のとおりであるが、右事実は右判断を左右するものではない。
これに加えて、原告らが被害にあったのは平成八年四月二五日から同年九月三日であるところ、その時点において、被告哲男が年金会オレンジ共済等に勤務していたことが認められないことは前記一7(三)のとおりであるから、この点からも、被告哲男には責任がないといわなければならない。
五 被告勝の責任について
1 原告らは、被告勝についても、前記四1の被告哲男ほか五名の責任を主張するが、前記四1と同様の理由で、原告らの右主張は理由がない。
2 また、被告勝は、代理店登録料を支払って年金会オレンジ共済と代理店契約を締結したが、自ら及び家族の名義で一〇〇〇万円以上のオレンジスーパー定期をしたこと、被告勝は、宇都宮に居住していて、オレンジ共済本部事務所を訪れたのは十数回にすぎないことなど前記一7(四)に認定の事実関係の下においては、被告勝が、オレンジスーパー定期事業が何らの運用実態も伴わない詐欺商法であることを認識しながら、達夫ほか二名らと共謀してこれを推進したとも、オレンジスーパー定期事業が違法なものであることを認識すべきであったという過失があったとも認めるのは困難である。なお、被告勝が百男に合計一億円を貸し付けたことは前記一7(四)のとおりであるが、右事実だけでは右判断は左右されない。
六 被告大久保の責任について
1 原告らは、被告大久保についても、前記四1の被告哲男ほか五名の責任を主張するが、前記四1と同様の理由で、原告らの右主張は理由がない。
2(一) しかし、被告大久保は、原告和田がオレンジスーパー定期契約を締結した平成八年四月当時、達夫ほか二名らが推進していたオレンジスーパー定期事業が、預り金を、達夫の選挙資金その他に流用する目的のものであり、運用することが予定されていない詐欺商法であり、右預り金が現実に達夫の政治資金その他に流用されていることを知りながら、したがって、被害の発生を予測していながら、オレンジスーパー定期事業という詐欺商法に加担していたものと認めるのが相当である。その理由は、次のとおりである。すなわち、
(二) 被告大久保は、みき子の弟であり、一時期は達夫らと同居していたこともあるなど、達夫らとは長年にわたる深い交流があり、達夫らの生活状況を知っていた上、平成八年四月当時は、年金会オレンジ共済に勤務してから約一年八か月が経過していた(前記一7(五)、前記第二の二1(四)のとおり)から、オレンジスーパー定期事業の実態を知りうる立場ないし状況にあったこと、オレンジスーパー定期事業は、達夫の政治資金、債務の返済、達夫ほか二名の生活費等の捻出を目的として開始され、集められた金員は、現実にもそのとおり流用され費消されていたこと(前記一2ないし5、7(五)、前記第二の二2(二)のとおり)、かつてオレンジ生命共済について詐欺的行為であるとして反対した(前記一2(一)のとおり)り、金融業に携わった経験等から、オレンジスーパー定期の年六、七パーセントという高利回りが可能かどうか疑問を抱いていた(被告大久保)など、被告大久保は達夫の事業に危うさを感じていたこと、被告益川が預り金の運用について疑問を抱いた(前記一4(一)のとおり)だけでなく、桑島も、預り金について運用されている様子がないため疑問に思い、被告益川に運用先を聞いたこと(甲六〇)、被告大久保は、オレンジスーパー定期事業が出資法違反ではないかと疑いを抱いていた(被告大久保)ところ、利殖を売り物にした金集めの多くは出資法違反で摘発され最終的に詐欺罪の適用を受けている(乙コ五四の4)が、前記経験を有する被告大久保はこれを知っていたであろうこと、被告石崎や被告益川は、年金会オレンジ共済が受け入れた金員を達夫が政治資金に流用していたことを知っており、被告益川は、これが世間に知れたら大変なことになると思っていた(甲五六の1、五七の1)が、被告大久保は、被告石崎や被告益川以上に達夫ほか二名と親密な関係であり、達夫ほか二名には年金会オレンジ共済による収入以外にこれといった収入がないにもかかわらず、多額の政治資金が支出されていたのであるから、オレンジスーパー定期事業の預り金からの流用であることを知っていたものと認められることなどを総合すれば、被告大久保はオレンジスーパー定期事業が詐欺商法であり、右事業による預り金が流用され費消されていることを知っていたものと推認するのが相当である。この点について、被告大久保は、百男から海外で運用していると言われ、これを信用した旨供述するが、前記事情からして、被告大久保が百男の言葉を信用したとは理解し難く、採用することができない。
また、右各事実に、オレンジスーパー定期事業は、達夫の政治資金等の捻出を動機として開始されたものであり、達夫の政治活動と密接な関連を有しており、達夫の政治活動の資金源である(前記のとおり)と同時に、オレンジスーパー定期事業の推進に達夫の政治家としての信用ないし権威が利用されたこと(前記一5(一)、(二)、6(一)、8(二)のとおり)、被告大久保は、昭和六三年ころから、達夫の政治活動に深く関与し、特に達夫が平成七年七月の選挙で参議院議員になってからは、達夫の公設秘書や第二十八総支部の幹事長を勤めるなど、達夫の政治活動の密接・重要な補佐役であったこと(前記一7(五)のとおり)、被告大久保は、オレンジスーパー定期事業による預り金が達夫の政治資金等に使われていることを知っていた(前記のとおり)にもかかわらず、これを容認、少なくとも黙認し、前記一7(五)のとおり、政治資金として費消されるに当たって具体的に関与したこと、被告大久保は、達夫ほか二名と密接な身分上の関係がある上、内部的には、達夫ほか二名、被告石崎及び被告益川が行っていた役員会と称する会合に参加したり、みき子や百男の説得にもかかわらずオレンジ共済に勤務することを断っていた被告哲男を自ら説得して勤務させたり、被告勝や被告鯉江に依頼して、年金会オレンジ共済組合・第一回理事会議事録に署名押印させたり、外部的にも代理店研修会に参加したこともある(前記一7(五)のとおり)など組織の内部及び外部にわたって重要な役割を果たしてきたことなどを合わせ考慮すると、平成八年四月当時、オレンジスーパー定期事業による詐欺商法に加担していたものと認めるのが相当である。
(三) 前記(一)の事実によれば、被告大久保は、オレンジスーパー定期事業の一環としてされた原告らに対する詐欺行為について、原告らに対し、達夫ほか二名ら他の不法行為者とともに、共同不法行為責任を負うというべきである。
七 被告鯉江の責任について
1 原告らは、被告鯉江についても、前記四1の被告哲男ほか五名の責任を主張するが、前記四1と同様の理由で、原告らの右主張は理由がない。
2 また、被告鯉江は、達夫及びみき子と親戚付き合いをし、達夫の生活状況の一端を知ってはいたが、主に達夫の政治活動の方面に関与していたなど前記一7(六)に認定の事実に甲第五七号証の2における「被告鯉江は、オレンジ共済の事務的なものには、ほとんど関与しないんじゃないんでしょうか。」との被告石崎の供述を合わせ考えると、被告鯉江が、オレンジスーパー定期事業が何らの運用実態も伴わない詐欺商法であることを認識しながら、達夫ほか二名らと共謀してこれを推進したとも、オレンジスーパー定期事業が違法なものであることを認識すべきであったという過失があったとも認めることはできない。
八 被告幸雄の責任について
1 原告らは、被告幸雄についても、前記四1の被告哲男ほか五名の責任を主張するが、前記四1と同様の理由で、原告らの右主張は理由がない。
2 また、被告幸雄は、達夫の政治活動を支援したり、百男との間に交際があったが、年金会オレンジ共済の事業にはほとんど関与していなかったなど前記一7(七)に認定の事実関係の下においては、被告幸雄が、オレンジスーパー定期事業が何らの運用実態も伴わない詐欺商法であることを認識しながら、達夫ほか二名らと共謀してこれを推進したとも、オレンジスーパー定期事業が違法なものであることを認識すべきであったという過失があったとも認めることはできない。
九 被告河野の責任について
1 原告らは、被告河野についても、前記四1の被告哲男ほか五名の責任を主張するが、前記四1と同様の理由で、原告らの右主張は理由がない。
2 また、被告河野は、達夫やみき子とは基本的には公認会計士・税理士と依頼者との関係であったと認められる前記一7(八)に認定の事実関係の下においては、被告河野が、オレンジスーパー定期が何らの運用実態も伴わない詐欺商法であることを認識しながら、達夫ほか二名らと共謀してこれを推進したとも、オレンジスーパー定期事業が違法なものであることを認識すべきであったという過失があったとも認めることはできない。
一〇 被告中島の責任について
1 前記一7(九)、8に認定の事実、前記二、三に認定の事実によれば、被告中島は、代理店(取次店)として、オレンジスーパー定期を取り次ぎ、達夫ほか二名らの原告らに対する詐欺行為に加担したというべきである。しかし、前記一7(九)の事実によれば、被告中島は、その際、詐欺行為をする旨の認識があったとは到底認められないから、被告中島が右詐欺行為に故意で加担したとはいえない。
2 そこで、被告中島が右詐欺行為に過失で加担したかどうかについて検討すると、前記のとおり、被告中島は、代理店を営み、顧客を勧誘して、オレンジスーパー定期契約を取り次ぐことにより、手数料を得ているのであるから、信義則上、顧客がオレンジスーパー定期をすることにより損害を被る危険があることを予見することができるときは、その取次ぎを回避すべき義務を負うというべきである。そして、右予見義務及びこれを前提とする回避義務の程度・範囲については、諸般の事情を総合して決すべきものと解するのが相当であるところ、次の<1>ないし<5>の事実関係の下においては、被告中島は、遅くとも平成八年四月の時点においては、オレンジスーパー定期事業について、適法性やその運用の実態等に関して必要な調査をして、顧客がオレンジスーパー定期をすることにより損害を被る危険があることを予見すべきであり、右予見義務を前提として被告中島には取次ぎを回避すべき義務が生じていたというべきであるから、この点において被告中島に過失があったといわなければならない。すなわち、
<1> 達夫ほか二名、被告石崎及び被告益川が犯した詐欺事件は、数年間にわたり、組織的かつ大規模に行われ、大きな被害を及ぼした大型詐欺事件というべきものである(前記第二の二2(二)のとおり)が、その間、被告中島は、自らも騙されたとはいえ、代理店の一つとして、右大型詐欺事件の一端を担い、二年余の間、顧客と年金会オレンジ共済等との間に、オレンジスーパー定期契約を延べ約一〇〇件(契約額約二億五、六〇〇〇万円)締結させたほか、約一〇〇人に生命共済契約を締結させて、多額の手数料を得て利得したものである(前記一7(九)のとおり)。<2> 一年定期の場合、銀行金利は、平成三年三月の年六・〇八パーセントから下落し続け、平成八年四月当時は年〇・五一パーセントにまでなったが、オレンジスーパー定期は、その間、一定していた上、年六・七四パーセントと高利回りであり、平成八年四月当時は銀行金利の一三倍を超えていたし、また、オレンジスーパー定期は、銀行預金と同じ預り金であるが、銀行預金とは異なり、代理店が手数料として契約額の六パーセントを取得するものである(前記一3(二)、4(四)のとおり)。これらの事情に照らせば、生命保険募集人であった被告中島としては、オレンジスーパー定期の高利性に不審を抱くはずである。<3> オレンジスーパー定期事業は出資法二条に違反するものである(前記一9のとおり)ところ、年金会オレンジ共済等に対し、平成七年八月には、新宿支部(代理店)のオレンジスーパー定期の宣伝活動に関し文部省から、同年一二月には、東広島支部(代理店)のオレンジスーパー定期の宣伝活動に関し、大蔵省財務局金融課や消費者センターから、それぞれ出資法違反の疑いがあるとの指摘があった(前記一6(一)のとおり)。被告中島は、代理店研修会等において、「顧客より二〇〇円を出資してもらうので(不特定かつ多数の者からの預り金ではなく)、出資法違反にはならない。」旨説明された(乙コ五七、被告中島)から、出資法の適用に関して問題があることは理解できたはずである。加えて、平成七年一〇月ころ、達夫ほか二名及び被告石崎は、弁護士から説明されて、オレンジスーパー定期事業がはっきりと出資法に違反することが分かったが、その後、代理店に対し、預かったのではなく借りたとすることに顧客の承諾を得るように連絡した(もっとも、出資法に違反するとはしていない。)のに対して(したがって、代理店であった被告中島はこれを知ったか知ることができたはずである。)、そんなことを顧客に言ったらみんな預金を引き上げられてしまうとか顧客が集まらないと言って、代理店が後込みしていると聞いたことから、結局、名称変更や申込書の形式を変えたにとどまり、実質は変えなかった(前記一4(六)の事実、甲五七の1、2)。<4> 利殖を売り物にした金集めの多くは出資法違反で摘発され最終的に詐欺罪の適用を受けており、そのたびに世間の耳目を集めてきたものであり、例えば、平成三年二月には福岡県警察本部において、年利八・三三パーセントをうたい文句に客集めをした事件が、平成四年七月には警視庁において豪州で資産運用するとして年利九・二パーセントないし一〇・二パーセントをうたい文句に客集めをした事件が、平成六年六月には警視庁及び神奈川県警察本部において一〇〇万円が五か月で二〇五万円になるをうたい文句に客集めをした事件が、いずれも出資法違反で摘発され、詐欺罪で立件された(乙コ五四の4)。<5> オレンジスーパー定期の利率が高いことについては、疑問を抱く顧客がいたし(甲六〇)、被告益川は、利息や手数料は、世間一般の金融業では考えられないものであると供述する(甲五六の1)。そして、代理店研修会等において、代理店から、融資先について、かなり質問され、企業秘密であるとの回答に納得しない人がいたり、教えてくれないのなら、代理店を辞めると言った人がいたり、過去の運用実績について、質問されたり資料の提出を求められたこともあった(甲五六の1)。そして、代理店を希望した者のうち何人かは、様子がおかしい、すなわち、オレンジスーパー定期事業ないし年金会オレンジ共済に不安を感じて、代理店になることを止めた者もいた(甲五七の2)。
ところで、前記のとおり、年金会オレンジ共済あるいは年金会オレンジ共済組合は、雑誌等においてオレンジスーパー定期の広告を掲載していたこと、年金会オレンジ共済は、達夫が主宰して運営していたものであるが、達夫は、国会議員を目指して活動し、平成七年七月の選挙で参議院議員になったが、達夫の選挙の際には、いわゆる大物政治家が応援演説をしていたこと、年金会オレンジ共済あるいは年金会オレンジ共済組合は、財団法人の設立を目指しており、公的性格を強調していたこと、オレンジスーパー定期事業の代理店は全国各地に二〇〇以上あり、会員数も非常に多数であったこと、原告らがオレンジスーパー定期契約をした時点においては、通常どおり、利息が支払われ、元本が返還されていたこと、被告中島も被害者であること等を考慮しても、前記判断は左右されない。
3 そこで、過失相殺について検討すると、被告中島について指摘した前記2の<1>ないし<5>の幾つかは原告らにも当てはまるものであって、その損害の発生について原告らにも過失があったというべきところ、被告中島の前記過失の内容、その他前記2の後段の「ところで」以下の諸事情を考慮すると、右過失割合は、原告らが八、被告中島が二とするのが相当である。
一一 被告滝田の責任について
原告らは、被告滝田は、被告中島と同様に、オレンジスーパー定期事業の適法性及び資金運用の方法につき調査確認する義務がある旨主張するが、被告滝田については、被告中島とは異なり、代理店ではないから、特段の事情のない限り、オレンジスーパー定期事業の適法性及び資金運用の方法につき調査確認する義務はないと解するのが相当である。
そして、被告滝田については、前記一〇2の後段の「ところで」以下の諸事情に鑑みると、特段の事情があったとはいえず、オレンジスーパー定期の適法性及び資金運用の方法につき調査確認する義務はないというべきである。
そうすると、被告滝田には不法行為責任はない。
一二 結論
以上のとおりであって、被告石崎、被告益川及び被告大久保については、原告ら主張の金員の連帯支払義務があるが、被告中島については、原告らの損害額を前記一〇3の過失割合で過失相殺すると、原告ら主張の金員の支払義務がなく、被告哲男、被告勝、被告鯉江、被告幸雄、被告河野及び被告滝田についても、支払義務がない。
よって、原告らの被告石崎、被告益川及び被告大久保に対する請求はいずれも理由があるから認容し、原告らの被告哲男、被告勝、被告鯉江、被告幸雄、被告河野、被告中島及び被告滝田に対する請求はいずれも理由がないから棄却し、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山口博 裁判官 村岡寛 裁判官 小田真治)